不合格家族――残念な典型。強すぎる母とエネルギー不足の息子
わが子と適度な距離感を保ち、任せるところは任せ、親としてやるべきことはやる。これが受験生の母親の、あるべきバランス感覚だが、著しくこのバランスを欠いた母親が存在する。
たとえば、三者面談で母親がしゃべりまくり、わが子の意見まで代弁してしまうようなパターンだ。志摩子さん(仮名・以下同)がそうだった。
息子・幸輔くんの学力を過大評価しているからか、「このままでは合格できる高校がないと思う」と馬上が説明しても、志望校の選択肢を広げようとはしない。併願校の話をしても、まるで聞き入れないのだ。
「受験校はすべて厳しいという模試の結果がもう何度も出ていました。なのに、『この子は頑張ればできるんです。志望校はこのままにして、もう少しやらせてみてください』と譲らない。本人は終始黙り込んだままで、母親がいつも一方的に話される。揚げ句の果てには、周りの友達が良くないとか、中学校の担当の先生との相性が悪いと言い始めて、いたずらに感情的になるばかりでした」
強い母親に抑えつけられ、萎縮している子供には共通点があるという。授業でわからないことがあっても講師に質問しない。スタッフが声をかけても逃げるように教室からスーッと消えてしまう、など。幸輔くんもそういう生徒だった。
模試の結果が悪くて泣きだすぐらいの情熱やエネルギーがあるなら一緒に戦えるが、無気力で逃げ帰るような生徒の場合は、塾側としても取れる対策が極端に減ってしまうのだという。
最終的には、無謀な選択ともいえる私立、国立の志望校にすべて落ち、都立で受けられるところを受験したのだがそこも落ちるという始末。かろうじて引っかかった無名校に進学することとなった。本来受けるべき、実力に見合った学校は1つも受けていなかった。