「欲しいものがあるとき、それが必要なものなのか、ただ欲しいと思っているだけなのかの区別が必要です。子どもに『これが欲しい』とねだられたら、我慢して貯金箱に入れておいて、3カ月経ったらもう一度自分の気持ちを確かめる。必要だと思っていたものが、実は単に欲しかっただけだった、と冷静になれる。これも1つの手法です」

この違いを学ぶための身近なツールは、昔ながらの「小遣い帳」だ。

「小遣い帳=倹約と思われがちですが、そうではなくて自分のお金の使い道を知るためにつけるといい。子どもの小遣い帳はしばしば金額が途中で合わなくなりますが、1円単位まで一致させることにこだわるより、本や漫画など少しまとまった金額の買い物だけメモしておけば、1カ月、数カ月、あるいは1年経って、『あれだけ欲しがったゲームソフト、今どうしてるの?』と聞く。すでに飽きて使っていなければ『それでいいの?』と問いかけることで、needとwantの違いを教えることができます」

「早く起業しろ」とプレッシャー

お金の性質を一般よりはるかに熟知していると思しき富裕層の人々は、わが子にどんな教育を施しているのか。

実は富裕層にとって、子どものマネー教育は悩みのタネだ。多くが金銭に細かい創業者と違い、2代目にとってはお金はあって当たり前。金銭感覚はまったく違う。そのために、シンクタンクの船井総合研究所のように、「きちんと後を継ぐために、2世の大学生を集めた勉強会を開いている」(同研究所・小林昇太郎氏)ケースもある。

“中国のユダヤ人”とも呼ばれる客家の血を引き、新宿・歌舞伎町の不動産で財を成したポーウェン・リー氏(59歳)はどうか。

「同じ資本主義経済の宿命の下で生きているのだから、華僑や客家、ユダヤ、日本人といえども、その根底に大きな差はありませんよ」

と苦笑するが、リー氏の亡父は戦前に台湾から日本へ渡り、歌舞伎町復興の基礎をつくった1人である。