韓国の民主主義の後退にはつながらない

米シンクタンク「米外交政策評議会(Council on Foreign Relations:CFR)」でインド太平洋を専門とする上級研究員のマイケル・ソボリックは本誌に対して、「韓国で共に民主党が政権を奪回すれば、韓国が北朝鮮や中国に対して再び宥和的なアプローチを取る政策に戻る可能性がある」と指摘し、さらにこう続けた。

「このところ日米韓の関係は進展しているが、それが後退する可能性もある」

本誌はこれについて中国外務省と在米韓国大使館に書面でコメントを求めたが、返答はなかった。

中国共産党機関紙人民日報系のタブロイド紙である環球時報は、3日付の論説記事の中で、今回の政治的な混乱について「中韓関係にはほとんど影響を及ぼさない」だろうと述べた一方で、尹がアメリカや日本との関係強化を目指していることが、中国との主な摩擦の原因だと指摘。

論説記事の著者は、「尹錫悦は権力の座に就いて以降、北朝鮮には強硬姿勢を取り、日本には媚びへつらい、アメリカに追随している。以前は良好だった中韓関係が、いったん最悪の状態に陥ったのはそれが理由だ」と主張した。

米スティムソン・センターのタウンは、近い将来、韓国で解散総選挙が実施されるだろうと予測。

閣僚メンバーや尹の側近が辞意を表明しており、また与党「国民の力」からも非常戒厳の宣言を強く非難する声が上がっていることを指摘し、尹の今回の行動が、韓国の民主主義の後退につながる可能性は低いとの見方を示した。

だがタウンは、今回の出来事が韓国の権威主義的な過去の記憶を呼び起こすものとなったと指摘した。

「短時間で解除されたとはいえ、今回の非常戒厳の宣言は、過去に権威主義的な体制による統治を経験し、民主化運動の中でそれに激しく抵抗した多くの韓国人に、当時の苦しみを思い起こさせるものとなった」

当記事は「ニューズウィーク日本版」(CCCメディアハウス)からの転載記事です。元記事はこちら
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