相手に合わせて、機嫌をとってはいけない

気くばりをする際、覚えておいていただきたいのが、相手に「気を配ること」と、相手に「合わせること」は、まったく違うということです。

たとえば、日ごろ相手を観察してきた成果として、相手が言ってほしがっている言葉がわかったとします。でも、自分の本心から言えないことならば、言うべきではないでしょう。お世辞など心にもないことを言うのは、単なる迎合、おべっかです。

親しくしたい、好かれたい、嫌われたくないと思うあまり、つい相手に合わせてしまう。そのような気持ちは理解できなくもありませんが、相手の機嫌を取るだけでは、いつまでも表層的な関係が続くだけでしょう。

本心から出た言葉なのか、それとも、その場のご機嫌取りのために出た言葉なのかは、相手にも何となく伝わるものです。みなさんにも、誰かの言葉に「これは私に合わせて適当に言っているだけだな」と思ったことがきっとあるでしょう。では、そういう人のことを信頼し、これから親しくしたいと思えるでしょうか。

皮肉なことですが、「好かれよう、好かれよう」とするあまり、ご機嫌取りに終始し、言葉が上滑りするほどに、相手の心は離れてしまうものなのです。正直でない人は、信頼も信用もされません。

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“本当の気くばり”であれば、気疲れしない

つまり、深い関係を築くには、相手と本心で向き合うことが一番といっていいでしょう。ありのままの本当の自分として相手と向き合っていく。ここでも、やはり自己肯定感の重要性がおわかりいただけるかと思います。

何より、相手に合わせようとして、心にもないことを言うことがしょっちゅうでは、自分が疲れてしまいます。自分を偽るのは存外に心を削る行為なのです。その相手といるときに、「本当の自分」でいられない時間が多いというのも、とても健全な関係とはいえませんね。

気くばりは、いっさい気疲れするものではなく、むしろ相手を喜ばせることで自分自身も満たされるもの。この本書の大前提からしても、今後、「相手に合わせる」という発想はナシにしましょう。

相手に興味をもって観察し、相手が喜びそうなこと、なおかつ――もっとも重要なこととして――自分が心からしたいと思うことだけを、心を込めて行動に移していってください。