暖房、加湿で壁内や床下で結露が発生し…

ところが、当時は高気密・高断熱住宅に関する知見があまりなく、気密をとらず、また壁の中の水蒸気を逃がすための通気層も設けていませんでした。暖房・加湿された暖気が壁内に侵入しても、水蒸気の逃げ場がないため、壁内や床下で結露が起こりました。

壁内や床下が湿った環境になったため、カビやキノコが繁殖し、特にナミダタケというキノコが大量に繁殖しました。ナミダタケが土台を腐らせ、多くの住宅の床が抜ける事態が起こりました。当時、北海道では相当問題になったようです。

「ナミダタケ事件」を知っているかどうかにかかわらず、この時の苦い記憶が、「日本の気候には高気密・高断熱住宅は合わない」という誤解が根強く残っていることにつながっているように思われます。

出典=Shutterstock

壁内結露は、冬に暖房加湿された湿った暖気が壁の中に侵入し、外気によって冷えている壁面側で温度が下がることで生じます。

喘息やアレルギーを引き起こすことも

壁内結露は、ナミダタケのような腐朽菌を発生させて、構造材を腐らせるだけでなく、湿った環境を好むシロアリ被害のリスクも高めます。シロアリ被害は、当然、耐震性能も劣化させます。

また、断熱材が湿ることによって、断熱性能が低下しますし、さらには壁の中でカビが発生し、カビはダニの餌になり、カビ・ダニはアレルゲンになり、喘息やアレルギーを引き起こすリスクを高めますから、居住者の健康にも悪影響を及ぼします。

出典=住まいるサポート
出典=Shutterstock

最近は、壁内結露は冬だけでなく、夏も問題になっています。35℃以上になる猛暑日が増え、高温多湿の夏の外気が壁の中に侵入し、エアコンで冷やされた室内側の壁面近くで結露になるのです。

特にコロナ禍以降、リモートワークの定着等で在宅時間が長くなり、冷房の使用時間も長くなっているため、より夏型結露が生じやすい状況になっているので、注意が必要です。