カレーは大人の食べるものという固定観念を破る
ハウス食品は1913年、大阪松屋町筋で薬種化学原料店浦上商店を創業したことから始まります。そして、洋食が普及し、カレー粉に含まれる香辛料の多くが漢方と共通することに創業者の浦上靖介が注目して、日本人の味覚に合ったカレー作りに取り組みました。
ハウス食品の独創的なところは、食品業界で初めて街頭で女性販売員による実演販売試食を開始したことです。そしてカレーが軌道に乗るとハヤシライス、こしょう七味からしなど取扱商品を拡大していきました。
戦後は人々の生活が忙しくなり、食生活を合理化したいという動きが強くなるなか、即席ハウスカレーを開発しました。またカレーは大人の食べるものという固定観念を破り、リンゴと蜂蜜入りのバーモントカレーを発売。
子どもたちにも喜ばれるような食品を作っていきました。いまでも「食で健康」をグローバルに届けるために新たな手を打っています。一つがカレーチェーン国内最大手のカレーハウスCoCo壱番屋を展開する壱番屋の買収です。
これは業界の注目を集めたものでした。なぜならば、食品メーカーは小さい外食企業を買収したことはありますが、壱番屋のように、ある程度規模感のある外食企業を買収するというのはこれまであまりなかったからでした。
売上約2000億円で年商440億円の壱番屋を買収したワケ
実際、ハウス食品の連結売上約2000億円に対して、年商440億円の壱番屋はかなり大きな買い物といえます。壱番屋は買収前、売上高経常利益率が10%を超えていて、外食企業としては優等生です。そのため、大手グループに入らなくても十分やっていける会社であったことも意外感に繋がりました。
一方で一部の業界関係者からは、当初から「納得」の声も多く存在しました。そもそも壱番屋にはすでにハウス食品からの資本が入っていたほか、さらにスパイスなどの食材で両社には取引があったためです。意外性と納得性のある合併であったといえます。
さて、日本国内におけるカレーショップの競争構造は独特です。リーダーであるCoCo壱番屋は約1000店舗を展開しているのに対して、2番手と目されるゴーゴーカレーは100店舗弱にとどまっています。
その意味で、ダントツの業界トップの壱番屋をグループに入れたハウス食品は、カレーのトップメーカーとしてさらに力を増しているといえます。また、スパイス専業のギャバン、食の専門商社である「ヴォークス・トレーディング」もグループに迎え入れています。
壱番屋が出てきましたので、同社を創業した宗次徳二氏の人材活用の話が興味深いのでご紹介します。なお、宗次氏は石川県生まれで関西の方ではないのですが、一時期尼崎にいたので少し強引に関西経営者としています。
宗次氏は、生後間もなく兵庫県尼崎市の孤児院に預けられ、3歳の時に養父母へ引き取られましたが、養父のギャンブル癖のため、少年時代は各地を転々とする極貧生活を送ったそう。