EVをめぐる貿易戦争勃発のリスクも
供給が過剰な中で融資を増やしても、結果的に不良債権の予備軍は増えるだろう。この問題は、不動産だけでなく、鉄鋼、EVなど中国産業界全体に当てはまる。中国経済の専門家の中には、「景気減速・後退リスクの食い止めに必要な政策立案が停滞した」との指摘もある。
2020年、中国政府は2035年にGDPを2倍にする目標を掲げた。実現に必要な平均成長率は年4.8%程度である。7~9月期のGDP成長率をはじめデータを見る限り、経済の成長率は低下傾向だ。中国が長期の成長目標を実現する難易度は上昇している。
当面、中国の内需は停滞気味に推移し、深刻な景気後退のリスクは上昇すると懸念される。一方、政府は安価な製品の輸出増加を狙うかもしれない。EVなどの分野で新興国を巻き込んだ貿易戦争が勃発し、米欧がドルやユーロに対して人民元が安すぎると批判を強める展開もありうる。
そうなると、中国の政策運営の安定性は低下し、個人消費、設備投資、海外からの直接投資や有価証券投資の減少懸念は高まるとみられる。中国政府が追加の金融緩和、財政政策を打ったとしても、政策運営の大元の発想を修正しないと景気の自律的・持続的な回復は容易ではないだろう。それは世界経済全体にとっても重要なマイナスだ。