内需の弱さを補ってきた輸出もピンチ

一方、過剰生産問題が国際的な問題になっている、EVなど“新エネルギー車”の生産は年初来で33.8%増加した。9月まで4カ月続けて中国の新車販売台数は、前年同月実績を下回ったものの、EVなどの販売は増えた。政府はBYDなどの生産に支援を行っているという。7月に積み増した購入補助金も支えに、EVやプラグインハイブリッド(PHEV)の販売は増えた。

強力な価格競争力を背景に、中国からロシア、アジアや南米などの新興国向けのEVなどの輸出も増加した。7~9月の輸出(ドル建て)は前年同期から6.0%増加した。

これまで中国は、経済環境の悪化に応じて小出しに対策を打ちつつ、輸出で国内需要の弱さを補ってきた。問題は、景気を下支えしてきた輸出にも息切れ感が出始めたことだ。その兆候が表れつつある。

9月の輸出は前年同月比で2.4%増にとどまった。5月から8月まで輸出は8%前後の伸びを示した。EV関連分野での米欧との貿易摩擦に加え、新興国向けの輸出にも先行き不安な材料が出始めた。

貨物コンテナの上空を飛ぶ飛行機
写真=iStock.com/Fahroni
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債権処理を速やかに進めるべきだが…

EV、汎用型の半導体、車載用バッテリー、太陽光パネル、医療機器などの戦略分野で、中国は過剰生産能力を膨らませている。国内で主要企業を支援し、それらの企業の国際市場での競争力を高める。それによって、主要先進国や新興国の競合企業に打ち勝とうとしているとして、米国、欧州委員会、ブラジルなどの新興国も明確な懸念を表明し始めた。今後、国内需要の弱さを輸出で補うことの難しさは高まるだろう。

不動産、地方政府の債務状態の悪化、家計と民間企業のデフレマインドなどを見ると、中国政府は経済全体の需要注入と債務処理を速やかに進めるべきだ。一部では、10兆元(200兆円)、あるいはそれ以上の財政出動が必要との指摘もある。

しかし、今のところ、中国政府は具体的な対策の明確な方針を示していない。これまでの対策を拡充すれば、いずれ景気は上向くとみているのかもしれない。10月17日、倪虹げいこう住宅都市農村建設相は、いわゆるホワイトリスト政策(地方政府が優良な住宅開発案件を選定し、銀行に融資をつけさせる制度)の拡大を表明した。