タイミングが後手後手になっている

10月18日、中国国家統計局は7~9月期の国内総生産(GDP)など主要な経済統計を発表した。GDPの数字を見ると、今年の中国政府の目標である5%の達成は難しくなりつつある。

中国の習近平共産党総書記・国家主席・中央軍事委主席は2024年9月23日午前、北京の人民大会堂で月探査プロジェクト嫦娥6号ミッションの研究・テスト参加者代表と会見し、重要演説を行った。
写真=中国通信/時事通信フォト
中国の習近平共産党総書記・国家主席・中央軍事委主席は2024年9月23日午前、北京の人民大会堂で月探査プロジェクト嫦娥6号ミッションの研究・テスト参加者代表と会見し、重要演説を行った。

中国の景気減速の要因はいくつもある。まず重要なのは不動産市況の悪化に歯止めがかからないことだ。依然として、新築住宅価格は下落傾向だ。住宅価格の下落を食い止めるため中国政府は対策を打っているのだが、なかなか期待されたほどの効果が表れてこない。今のところ、政策対応は対処療法的なものにとどまり、しかもタイミングが後手後手になっている。

不動産市況の悪化と景気後退懸念の顕在化で、家計部門の節約志向は一段と鮮明化している。短期的に個人消費が盛り上がることは期待しにくい。それに加えて、これまで景気の下支え役を果たしてきた輸出も、ここへきて伸び率の鈍化傾向が出ている。その背景には、日米欧と中国の貿易摩擦が鮮明化していることもある。

こうした状況は短期間に大きく変化することは考えにくい。当面、中国経済の本格的な回復は望めないだろう。むしろ、景気対策のタイミングが遅れたり、政策の規模や政策の方針を間違えたりすると、中国経済の後退が深刻化することも懸念される。

個人消費の落ち込みが深刻

7~9月期、中国の実質GDPは前年比で4.6%増だった。2024年1~3月期の成長率は同5.30%、4~6月期は同4.70%だった。前年比でみると、明らかに中国の景気は減速している。7~9月期、日米欧など主要先進国と同じように前期比年率でみた成長率は3.6%だ。2015年からコロナ禍が発生する以前まで、中国経済は前期比で年6%台後半の成長率を維持した。経済成長率の低下は鮮明といえる。

主な需要項目別にみると、まず、個人消費に勢いがない。1~9月期の社会消費品小売総額(小売売上高)は前年同期比で3.3%増だった。1~6月期の同3.7%を下回った。モノとサービスに分けてみると、9月財の売上高は前年同月比3.3%、飲食は同3.1%増だった。