「金銭的報酬がもらえないグループ」のほうが好成績だった
これまでの研究において、このような場合の心理的影響が解明されています。ロチェスター大学の心理学教授であるエドワード・L・デシ博士によって提唱されたもので、大学生に対するパズルと金銭的報酬の実験によって研究が行われました(※2)。
※2 Deci, E. L. (1971). Effects of externally mediated rewards on intrinsic motivation. Journal of Personality and Social Psychology, 18(1), 105-115.
実験に参加した大学生を2つのグループに分けて、1つのグループには「パズルを解くと1ドルの報酬がもらえる」と教え、もう1つのグループにはパズルを解く理由は教えませんでした。
しばらく試験官はその場から立ち去ります。興味深いことに試験官が立ち去った後にも、報酬がもらえると伝えられなかったグループの方がパズルを続けた人が明らかに多かったのです。
つまり報酬のためにパズルをした場合よりも、純粋にパズルを楽しんだグループの方が長く続けられたということです。
報酬を与えるとやらなくなってしまう
同様に、スタンフォード大学の心理学部教授のマーク・レッパー博士による未就学児に対する興味深い実験結果があります。
お絵描きをよくする未就学児に、お絵描きをすることに対して報酬を与えるという研究です(※3)。
※3 Lepper, M. R., Greene, D., & Nisbett, R. E. (1973). Undermining children’s intrinsic interest with extrinsic reward: A test of the “overjusti¬cation” hypothesis. Journal of Personality and Social Psychology, 28(1), 129-137.
もともとお絵描きが大好きという内発的動機がある子どもに対して、報酬を与えた場合、報酬を与えない場合よりもお絵描きをしなくなってしまうことが明らかになりました。この現象を「アンダーマイニング効果」と呼びます。
つまり、「ただ好きでやっていることに勝るものはない」ということ。