血圧コントロール率の低い日本

健康診断の基本的な検査項目によって、高血圧症、脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病を発見できる可能性が高いです。これらの病気は自覚症状が少ないため、日常生活の中で異常を感じることは少ないかもしれませんが、放置すると生命に関わるリスクが高まります。

例えば、近年高血圧の治療戦略は「より早く、より厳格な24時間にわたる降圧」と言われていますが、日本での治療率は約53%、血圧コントロール率は30%程度にとどまっています。これは台湾や韓国と比較しても低い数値です。台湾では治療率89.4%、コントロール率70.2%、韓国では治療率61.1%、コントロール率69.3%に及びます。健康診断で指摘を受ける場合にはコントロールが不十分である事が多いため、早期に対応することが重要です(苅尾七臣「高血圧の最新治療2021 ガイドラインからデジタルハイパーテンションへ」第118回日本内科学会講演会 教育講演)。

また、糖尿病においては軽症の耐糖能異常であっても、累積死亡率は健常者の2倍以上と言われており、異常が指摘された際は早めに受診することが大切です。

胃がん・大腸がんの検査も追加したほうがいい

また、がんの検査についても考慮が必要です。企業によっては、健康診断のオプション検査を追加できます。基本的な検査項目でがんを発見することは難しいため、生活習慣や遺伝、年齢などを考慮して、リスクが高いがんの検査を追加すると良いでしょう。

男性は30歳以上、女性は40歳以上で、胃がんや大腸がんの死亡率や発症リスクが高まります。定期健康診断の必須検査項目には胃の検査や便潜血検査が含まれていないため、年齢に応じて腹部超音波・便潜血検査・胃内視鏡検査(特に30代以降の受けたことがない方、前回受けてから2年以上経過している方、胃腸に不調を感じている方、飲酒習慣がある方)や、ピロリ菌抗体検査(血液検査で調べたことがない方)を追加することをおすすめします。

写真=iStock.com/unomat
※写真はイメージです

胃透視検査(バリウム検査)と胃内視鏡検査(胃カメラ)の選択について、よく質問される事があります。胃透視検査(バリウム検査)は、胃内視鏡検査と比較して検査時間が短く、全体像や動きを観察することができます。そのため、全周性に収縮している像を持つスキルス性胃がんの発見には、内視鏡よりも向いていると言われています。一方で胃内視鏡検査は、胃の粘膜を直接見ることができます。侵襲性は高くなるかもしれませんが、病変そのものを色まで確認し、必要に応じて細胞を採取することもできます。