9候補の評価一覧
まずは候補者9人が視聴者にどう見えていたのかを示すシーン(以下、NHK番組)。
登場する順番の運不運は多少あるものの、ほぼ全員が16秒ほど話す「選挙当日の抱負」を並べたVTRが興味深い。
スタジオでキャスターが前振りをしてVTRは始まった。
トップバッターとなった高市氏は、開始10秒ほどで視聴率が急落した(0.07%下落)ことがグラフで一目瞭然だ。すでに説明した通り、同中継は1分あたりで平均0.023%視聴率が上がり続けていた。明らかにこの10秒ほどで、他のチャンネルに替えたか、テレビを消した人が一定程度いたことを示す。ただし、視聴者がNHKの演出(9人の候補者のVTRが並列的に出てくる)にNOと言った可能性もある。
それでも高市氏以降に出てくる8人の場合、人によって数字の上下があるところを見ると、視聴者は誰が何を話しているのかを評価していたことは間違いない。
2番目に登場した小林鷹之氏と4番目の小泉進次郎氏の16秒間は、基本的に下がっていない。特に小泉氏は上昇基調となった。とりあえず何を言うのか聞いてみようと、流出を踏みとどまった視聴者が多かったと思われる。
3番目林芳正氏・5番目上川洋子氏・6番目加藤勝信氏・7番目河野太郎氏・9番目茂木敏充氏は上昇しなかった。ところが、年配者も8番目の石破氏だけは、小泉氏と同じように右肩上がりとなった。興味を持った視聴者が明らかに多かったことを示す。
高市氏と石破氏への視線
次は決選に残った高市氏と石破氏への視線を精査してみよう。
実は番組が始まって間もなく、両者は比較的平等にNHKのカメラが映し出していた。1回目の国会議員による投票の時で、自席から壇上に向かい、投票用紙に記入し投函、その後席に戻る途中までを両者ともに1分以上映されていた。その間には2人それぞれに解説がつけられた。
両者が登場する平均視聴率には差があった。
石破氏が7分ほど先に投票に向かったためだ。この間に中継特番を見始めた人は増えており、結果として両者の平均視聴率に差が生じた。
注目すべきは平均ではなく、視聴率増減の傾向だ。
図表3のグラフにある通り、石破氏は映し出され始めてから自席に戻り始めるまでにじわじわ数字が上がった。解説を聞きたい、あるいは石破氏の表情や緊張ぶりを画面から読み取りたいと思った人が少なくなかったということだ。少なくとも石破氏の1分強で、離脱する人は多くはなかった。
ところが、高市氏は異なった。
登場から自席に戻ろうとするまでの1分弱、視聴率はほぼ横ばいのままだった。すでに触れた通り、この間に流出者がいなければ視聴率は上がっていたはずだ。つまり流入者と同じだけ見るのをやめた人々がいたということだ。
総裁選の直前、市場は円安株高に動いた。
経済界では「戦略的な財政出動」「日銀利上げに慎重」を掲げた高市氏の首相就任に期待した結果だった。ところが円安株高現象は、いわばラウドマイノリティの声に過ぎない。一般大衆というサイレントマジョリティは、高市氏を評価していなかった可能性が高い。