国内マーケットの制覇は国内での成長余地の限界を意味する

こうして雑貨+家具コスパ大型店として地方のロードサイドを席捲したニトリにとっての最初のハードルは、大都市マーケットの攻略だった。広い一戸建てが基本の地方と、狭い戸建て、マンションなどに住んでいて、家具をあまり置けない大都市生活者のニーズは異なる。また、地方のような大型店を出すスペースが少なく、地代も高い大都市圏では、従来型の店舗の出店余地は少ない。そこで「デコホーム」という都市型小型店舗が登場する。ホームファッション雑貨と軽めの家具で再構成したデコホームを商業施設内に出店することで、大都市への進出を可能にした。デコホームは、前期末174店舗に増えているが、これによりニトリの実質的な全国展開の道筋は整った、といえるだろう。

こうしてニトリは国内マーケットをほぼ制覇するメドがついたのであるが、それは国内での成長余地の限界が見えてくるということでもある。会社でも国内での飽和に対する考え方を公表していて、地域ごとの人口あたり売上を比較して、低い地域を最も高い水準に引き上げていく、そして、品揃え、サービスの幅を広げることで全体の水準を引き上げていくことで、成長余地を生み出せるというものだ。

一人あたり売上を上げれば成長余地は生み出せる

図表4は、この考え方に沿って各地域の一人あたり売上から実際に試算してみたものである。確かに会社の言う通り、2023年度実績で最も高いのは地元北海道(6万3000円)だが、最も低い東北は4万7000円とかなり差はある。また、コロナ前の2018年度と比べてみると、どの地域も概ね1000円ほど引き上げられている。会社の言う通り、商品、サービスの拡張で消費者への浸透を図っていく、という考え方は十分ありうるということだろう。これでいくと、一人あたり売上7万円、8万円、9万円へと上げていくことで、+2500億円、+3700億円、+5000億円ほどの成長余地を生み出すことが可能、といったイメージである。

ニトリIR資料より筆者作成