年を取れば取るほど、肉を食べるべき

【和田】1日30種類のものを食べましょうと私たち医師は推奨していますけれども、幕の内弁当を食べるだけで15種類は摂れるんですよね。ですから、お家ご飯が健康にいいように一見みえるけれども、粗食だとどうしても種類が摂れないんです。昔は貧しいから品数の少ないものを食べていた。けれども年を取るとなぜか、そういう貧しい食に戻ってしまう人が多い。

【中尾】いろんな要因がありますよね。経済的なこともあるでしょうし、面倒臭いということもあるでしょう。

【和田】韓国や台湾に行くと、小皿で20皿くらいいろんな料理が出てきますよね。普段から高齢者を診察している医者からすると、あれはとてもいいですよ。大勢で食べに行ければ、コストを安く抑えることだってできるし、そのぶん、品数を増やせますしね。

【和田】高齢者の健康についてお話しすると、やはり60代以降は筋肉を落としてはダメですね。年を取ってから筋肉が落ちると足腰が弱り、歩けなくなる原因になります。前にお話ししたように、男性の場合は男性ホルモンが減ってくると筋肉が落ちてしまうから、筋肉を維持することが大事です。

男性も女性も肉体維持のためには、年を取れば取るほど、肉を食べるといいと思います。良質のタンパク質を摂取すること。そのとき問題になるのが、脂肪ですね。アメリカ人は脂肪の摂りすぎが問題で、心筋梗塞が多いのですが、逆に日本人は脂肪を摂らなさすぎる。いわゆる健康的なピチピチとした肌や胸、お尻というのは、全部脂肪ですから。脂肪を摂りすぎるのもいけないけれども、目の敵にしすぎてもいけない。

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60代以降の「食事制限ダイエット」は絶対NG

【中尾】昔の常識は今日の非常識になってきていますね。食べ物に関しても、私たちの年代はとくにそうだけれども、いろいろ勘違いしている部分が多い。今の脂肪の話にしてもそうです。第一、食用の油にしても、今は昔と違って、品質もいいですものね。

【和田】ええ、良質なものが増えました。あとは身体に良い油というものも確実にあります。DHAなどが含まれる魚の油とか、オリーブオイルなんかがそうですね。いずれにしろ、油・脂肪が足りなくなると、一気に老け込んでしまいますから。極端な話、週に2、3回トンカツを食べても身体に悪いわけではないと思いますよ。

【中尾】私もサラダにオリーブオイルをかけたりはしますけれども、体型の維持もあって、少し油ものは控えるようにしています。でもそれよりも身体を動かしていれば問題ないですよね。

【和田】とくに60代以降やってはいけないのは、食べ物を減らして痩せようとすることですね。これは確実に栄養不足になります。食べ物をきちんと摂って運動して痩せようとするほうがはるかに身体にいいと思います。ですから私自身は、60代以降は小太り程度がちょうど健康的でいいのかなと思います。とにかく食べ物はきちんと摂ること。年を取ってから元気を保ついちばん重要なポイントですね。