危機のたびに金価格は上がる

金は、無国籍資産としての価値が安定しているため、国際的な経済危機の発生や、政情不安の高まりで、ニーズが拡大、値上がりする性質があります。

例えば、最近でも新型コロナウイルスのパンデミック、ロシアのウクライナ侵攻、イスラエルとパレスチナの軍事衝突などが立て続けに起こったことで、金の価格も上昇。さらに、米国との対立を深めるロシアや中国は経済防衛のため、ドルの保有量を減らす代わりに、金の保有量を増やしています。

特に中国では、政治や経済の先行き不安から、富裕層も金を積極的に購入し、23年には中国の金購入量が前年比30%増となるなど、世界の金市場を中国が支えているとも言われています。

興味深いのは、金と並んで貴金属の代表と目される「プラチナ」と金の関係。金よりも希少性が高いプラチナの価格は、00年頃まで金の約2倍だったのに、現在では金の半額以下になってしまいました。

工業向けの需要が中心のプラチナに比べて金の需要のほうが幅広いといった理由が考えられますが、私は、「金が好き」な中国人が、経済成長に伴って金を大量に保有したため、金の人気を押し上げたのではないかと見ています。

インフレや低金利政策で、通貨の価値が相対的に下落する局面でも、金の価格は上がります。それに、株や米ドルの価値が低下すると、シーソーのように、金の価格が上昇するという「逆相関関係」も見られます。

例えば、経済危機で株が売られると、売却で得られた資金が、安全な資産である金に流れたりします。反対に、金の国際価格は13〜18年、いったん大きく下がりました。

ただし、金の価格は、さまざまなファクターによって決まるので、一筋縄ではいきません。一般に、ドル高の局面では下がる傾向にありますが、日本国内の金価格は、海外のドル建て金価格もベースとなるので、為替相場の「円安ドル高」の影響を受けて、上がってきた側面があります。