郊外に増える買い手のつかない空き家

だが、コンパクトシティー化が進んで中心部に人が移り住めば、郊外に空き家が増えてしまう。

冒頭のEさんは、マンションに転居後、幸いにして戸建てを売ることができた。だが、91歳の母親が1人で住む実家は、もし母が住まいを移せば買い手はつかず、「空き家になる可能性が高い」とこぼす。実家があるのは高知市から片道2時間の海辺の町で、過疎化が進み、周辺には空き家も増えている。

「いまはまだ元気でなんとか1人で暮らせていますが、母にはいずれは市内に来てもらわないと。実家のあたりはこれからもっと不便な場所になっていくやろうし、僕たちが実家に暮らす選択肢はないし……」(Eさん)

コンパクトシティー化は「仕方ない」

不動産問題に詳しい明海大学不動産学部の中城康彦教授は、「コンパクトシティー化の流れは、必然で仕方がない」と指摘する。少子高齢化が進み、税収の枠も小さくなれば、行政サービスも収縮せざるを得ない部分もあるからだ。

「利便性の高いコンパクトシティーで暮らしたいというシニアのニーズもある。今後は、都市部と郊外の役割やあり方を考えた、大きな枠組みでの街づくりが必要となります」(中城教授)

一方で居住者にシニアが多いマンションは、管理組合の運営や、管理費や修繕積立金などの滞納、認知症による徘徊など、高齢者ならではの問題もある。国土交通省の「マンション総合調査」(2023年度)によれば、現在の分譲マンションは世帯主の2人に1人が60歳以上で、4人に1人が70歳以上だ。中城教授は言う。

シニアの多いマンションの問題とは

「高齢化で認知症患者も増えるなか、シニアが多いマンションは、さまざまな問題が発生する可能性があります。管理規約や細則に定めていると説明したり、書面で注意したりしたとしても、解決はなかなか難しい。特に分譲マンションは所有権があるため、問題行為のある居住者がいたとしても、退去させることも難しい」

Eさんが入居したマンションには、シニア層や単身者は多い。管理組合の会合やイベントなどを通じて入居者同士の交流を図っているが、交流に積極的でない人もいる。

「高齢化も進むし、これからはマンションの住人同士の共助の仕組みとかも必要な時代になってくるんやないかな」(Eさん)