“熟成方法”には定義がない

牛肉を熟成させる場合に、ウエットエージングとドライエージングの2つの熟成方法があります。

ウエットエージングでは、表面に付着した細菌が徐々に繁殖するため、4℃で保存した場合には、熟成期間は約10日間で、それほど長くはありません。

一方、ドライエージングは、米国で始まった牛肉の熟成方法で、肉の保存庫の湿度を下げ、肉の表面に冷風を送ることにより細菌が繁殖しにくく、通常より長く保存できます。

この条件だと赤身主体の肉を2倍以上長く保存できます。黒毛和牛の肉を長期間熟成させる場合は、ドライエージングになります。牛肉をとり扱う飲食店では、それぞれがこだわりを持った熟成方法で肉を提供しています。

2017年度に東京都が、都内の食肉を扱う業者を対象に、「いわゆるドライエイジングビーフの衛生学的実態調査」を実施した結果、複数の業者からわずかですが食中毒菌が検出されたと報告されています。

これは、熟成肉に関する基準やルールがないことによります。これまでに熟成肉による健康被害の相談は寄せられていませんが、皆さんが自宅で熟成肉を食べるときには、消費期限を守って食べるようにしてください。

A5ランクの「A」は“おいしさ”を意味しない

皆さん、牛肉を購入しようと思い、スーパーでパックを手にしたときに、「A5」や「A4」の表示を目にしたことはありますか。

「A5」の肉は、「A4」の肉より高級だと思う人が多いかもしれません。でも、「A」や「5」「4」という表示は、いったい肉のなにを示しているのでしょうか。

牛肉の「A5」や「A4」は、肉のランクを示す指標で、農林水産省の承認を得て制定された「牛枝肉取引規格」に基づいて決定されます。全国の食肉卸し売り市場や食肉センターでは、専門の格付員が毎日、と畜された牛の枝肉の肉質を評価しています。

この指標には、「歩留ぶどまり等級」と「肉質等級」があります。歩留等級とは、1頭の牛から、どれだけ多くの肉がとれたかを示す指標で、「A(標準よりよい)」、「B(標準)」、「C(標準より劣る)」の3段階で評価されます。

歩留等級の評価は肉を食べたときのおいしさには直接関係しないので、消費者がこの指標を気にする必要はありません。