「恥を知れアレシャンドレ」
イーロン・マスク氏とモラエス判事との対立はすでに数カ月に及んでいる。確執が世界的に知られたのは、今年4月6日にマスク氏がモラエス判事の過去のXのツイートに対して「なぜあなたはブラジルでこんなに多くの検閲を命じるのですか?」とリプライしたことに始まる。
翌日には「近々Xはアレシャンドレ・デ・モラエスの要求すべてと、その要求がいかにブラジルの法律に違反しているかを公開します。判事はあからさまに、繰り返しブラジル憲法と国民を裏切ってきた。彼は辞任するか弾劾されるべきだ。恥を知れアレシャンドレ」と痛烈に批判した。
最高裁がフェイクニュースの根絶に躍起になっているのは、左派のカリスマであるルーラ現大統領の就任直後の2023年1月8日に、選挙に不正があったとする偽情報に扇動された右派の前ボルソナロ大統領支持者ら約4000人が、ブラジリア三権広場の大統領府、国会議事堂、最高裁を襲撃したからだ。この暴動はアメリカのトランプ前大統領支持者らによる2021年のアメリカ合衆国議会議事堂襲撃事件を倣った、国家権力を脅かす事件として記憶に新しい。
以後、前選挙高裁長官でもあるモラエス判事はブラジル国家のフェイクニュース対策の中心的存在としてSNSの取り締まりを強化してきた。
「ユーザーの情報を集めようとした証拠」を公表
これに対してマスク氏は、最高裁による高圧的な情報要求を「国家による検閲だ」と訴えて応じず、徹底抗戦の姿勢を示してきた。
マスク氏は4月、本人がツイートしたとおりに「ツイッター・ファイルズ・ブラジル」と呼ばれる文書を公開した。文書はブラジルで旧Twitterの法律顧問を務めた人物と同僚らとのメールのやり取りを示したもので、そこには顧問の男性がブラジル当局からユーザーに関する情報提出を求められた経緯がまとめられていた。
マスク氏は「モラエス判事、検察、選挙高等裁判所が情報を大量に収集することを目的としてユーザーデータにアクセスしようとした証拠だ」としている。