自尊心を高めるよう働きかけるべき?

しかも、日本人の自尊心は、他の国と比較して低いだけではなく、学年が上がるにつれて徐々に低下していく傾向がみられます。とくに、小学校低学年から中1にかけての低下が顕著です(図表2)。

「学力」の経済学』(ディスカヴァー携書)より

こうした調査を受けて、「家庭や学校で自尊心を高めるように働きかけることが重要だ」という識者もいます。この主張は正しいのでしょうか。

自尊心のような目に見えないものを数値化するのには、心理学の手法を用います

*自尊心を計測する有名な指標としては、心理学者であるローゼンバーグ教授によって提案された「ローゼンバーグ自尊感情尺度」が有名。

たとえば、調査対象者に対して「少なくとも人並みには価値のある人間であると思うか」とか、「自分には自慢できるところがあまりないと思うか」などの質問をして、その回答から自尊心を表す指標を作ります。

こうして図表2のように数値化された自尊心の指標を用いて、さまざまな研究が行われました。

アメリカで行われた大規模プロジェクト

いくつかの研究では、自尊心が高いと学習意欲や学力が高く、未成年の喫煙や飲酒などの反社会的行為が少ない一方、大人になってからの勤務成績、幸福感、健康状態は良好な傾向が示されました。

これを受けて米国のカリフォルニア州では、「社会問題の多くは個人の自尊心が低いことに起因している」という考えから、1986年以降、州知事主導で自尊心にかんする大規模な研究プロジェクトを始動させました。

「子どもたちの自尊心を高めれば、学力や意欲が高まり、反社会的行為を未然に防止することができるのではないか」と期待してのことです。