地域ごとの危険度がランク付けられている

首都直下地震では広域で長期のライフライン停止が予測される。膨大な数の帰宅困難者と避難所生活者の発生、また発災後の深刻な物資不足などについて、百年前よりも一層の防災対策が求められる。

都市型の巨大地震災害に対する防災対策は始まったばかりと言っても過言ではない。首都直下地震の発生は十年後になるかもしれないし、明日かもしれない。よって過密都市に起こり得る「最悪の事態」を事前に想定し、能登半島地震など近年頻発している直下型地震を教訓にしっかりと備えていかなければならない。

2021年10月7日に首都圏で最大震度5強を記録した地震は、東京国際空港と千葉県浦安うらやす市で長周期地震動を観測し、室内の棚にある食器や本棚の本が落ちるほか、高層階では物につかまらないと歩けない事態となった。

首都圏をなす東京・埼玉・千葉・神奈川の1都3県には日本の全人口の約3割に当たる4400万人が暮らし、名目GDPでも日本全体の32%に達する。ここで発生する激甚災害の「首都直下地震」に対して東京都は「地域危険度一覧表」を公表している。地震による直接的な建物倒壊、間接的に発生する火災による延焼、発災後の避難救助に対する困難度という3点による危険度を数値化し、ランク1から5の5段階で分類されている。

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危険度が高いのは東京の東部に集中している

危険度が最も高いランク5は荒川区、足立区、墨田区、江東区など東部の6区を中心として表示され、そのほか中西部の中野区や杉並区にも「ランク4〜5」の地域が出た。危険度の原因をくわしく調べると、1番目の「建物倒壊危険度」に関しては直下型地震で生ずる揺れへの地盤と建造物の抵抗力が関わることがわかる。

具体的には、東京下町の河川の土砂が埋めた沖積地では地盤が軟弱で、地震動が増幅されやすい。同様にウォーターフロント沿いの埋め立て地も液状化などが起こりやすい。また建物倒壊を左右する建造物の耐震性については鉄筋の有無や建築年数などで左右され、たびたび改定されてきた建築基準法の施行時期前後によっても大きく変わる。

2番目の「火災危険度」は、出火しやすさと延焼の危険性から決まる。消防車が通行できない狭い道路や耐火性能の低い住宅が残っている地域であるほど、危険度は上がる。前述の通り一般に東京23区の西部は東部に比べると地盤は良いのだが、環状7号線の周囲などに見られる木密地域がこれに当てはまる。

3番目の「災害時活動困難係数」は、危険地からの避難や消火活動が難しい度合いに比例する。公園など活動有効空間が足りない地区が危険なのだが、狭い道路が残る杉並区や世田谷区の住宅地などが相当する。