【亀田】成功する人によく見られる現象だと思います。私は、物と心は補完関係にあると思っています。おそらく現在の稲場社長は、特筆できる技術や実力を手に入れられたので、ブランド物を必要としなくなったのでしょうね。駆け出しの頃、勝負をかけるときにはどんな小物を用意されましたか。
【稲場】もちろん財布はブランド物の長財布で……。いまは恥ずかしくてとてもできないけど、当時、携帯電話持ってる人少なかったんですけど、ショルダーフォン持ってたんですよ、社内外兼用の。で、長財布とショルダーフォンと腕時計を商談の机の上にドンと置いて……。
【亀田】3点セットですね。
【稲場】ほんと、バカですよね。田舎者の成り上がりも甚だしい。
【亀田】ちなみに時計は?
【稲場】カルティエの金無垢。
【亀田】わかりやすいですねぇ。
【稲場】うちの商売は仕組み的に、みなさんに使っていただかないと潤っていかないから、やっぱり僕自身もお金を使わなくては入ってこないのかなと思います。だから、通過していくお金の量はすごいんですよ。でも、これからは、自分を通過していく速度を若干緩めようかなとは思っています。僕のところで完全に留めようなんて、おこがましいことは考えていませんけど。
【亀田】自分のところで留めるのは、おこがましいんですか。
【稲場】僕はそんなこと、一生できない星の下に生まれてると思います。ドカーンと通過していくのを、若干滞留させて、そこから少しずつ流していくみたいなイメージです。