【亀田】むしろ、ブランドをわからせたい人が多いと思いますが。
【稲場】なんか、すごく嫌ですね。
【亀田】ビジネスで成功されたから、興味がなくなったのでは?
【稲場】別に成功してるわけじゃないんですけど、いまはブランドって全然興味ないです。昔、そうだな、20年ぐらい前かな、猫も杓子もブランドっていう時代があって、その頃は、無理してでも買っちゃえっていうぐらい欲しかったんですけどね。
【亀田】20年前というと、ちょうど事業を始められた頃ですね。
【稲場】あの頃はお金持ってなかったんです。朝から晩まで、店舗3つぐらい掛け持ちしても月に20万ぐらいしか稼げなかった。結婚もしていたんですが、ほとんどなけなしみたいな状態でした。一番ブランド物が欲しかったのは、その時代ですね。
【亀田】人間が成功の階段を駆け上がっていくときって、物の力を借りる時期があると思うんです。いい物を身につけることによって、稼ぐ人間としてのセルフイメージを高めていく過程が必ずあると思います。
【稲場】ああ、物の力ってすごくあると思いますね。人の家に上がって営業するとき、靴下に穴があいてたりするとなんとなく卑屈な気持ちになるじゃないですか。でも、いいスーツを着て、いい小物を持って相手と対峙してると、武装できるっていうのかな。ちょっと自信を持てる。
【亀田】よくわかります。
【稲場】本当はそこから先が勝負で、内面で相手と対峙してビジネスを成功させるべきなんだろうけど、創業当時は特筆できるような技術とか実力とかを持っていたわけではないんで、せめてブランド物で武装したいっていう気持ちはありましたね。