扶養家族がいる人が退職する場合

会社を辞めると厚生年金を外れると書きましたが、健康保険については「続ける(任意継続する)」か、「脱退する(「国民健康保険」に移行する)」かを選択できます。

この選択によってその後の保険料の負担が変わります。慎重に考えたいところですが、「絶対にこちらが有利」と言えるものではありません。まず、たとえ任意継続を選ぶにしても保険料の負担は増えます。会社に勤めている間は、健康保険料は会社と従業員が折半して払います。

でも退職すると全額自己負担。退職時の標準報酬月額に基づき健康保険料が計算され、全額自己負担となるため、支払う健康保険料は在職時の2倍になります。

では国民健康保険のほうが負担は軽いかというと、そうとも限りません。国民健康保険料の計算は市区町村によって異なりますが、家族の人数に応じた加算などがあり、任意継続の保険料よりも高くなるおそれがあります。

ではどうすればいいかといえば、「扶養家族がいる場合は任意継続を選ぶ」がいいと思います(※)

なぜなら、会社の健康保険は扶養家族が何人いても保険料が増えないから。国民健康保険料は家族の分だけ負担が増えます。単身者であればどちらを選んでも保険料の負担はそこまで変わりません。

※夫婦共働きで会社員をしていて、夫が退職するようなケースであれば、子どもを妻の扶養に入れることで国民健康保険料の上昇を抑える方法も有効です。世帯で見ると……妻の健康保険(妻本人分&子ども分)+夫の国民健康保険(1人分)

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転職ブームだが、退職金が減るのが心配

ただし、任意継続を選択した人も、退職した後の2年目は、任意継続をやめて国民健康保険に切り替えたほうが得な可能性が高いです。

国民健康保険の保険料は前年所得をベースに計算されます。退職した翌年に前年所得が大きく減っていれば国民健康保険料は小さくなります。しかし、2年目も任意継続を続けていると、任意継続は退職前の収入ベースで保険料がかかるため、負担が大きくなってしまうのです。

なお、任意継続ができる期間は最長2年間。その後は必ず任意継続を脱退するので、国民健康保険に移行するか、再就職先の健康保険に加入することになります。

転職を重ねた場合、気になるのが「退職金」。たびたび転職すると、退職金が少なくなる可能性があります。

日本の退職金制度は、今なお多くの企業で終身雇用を前提に設計されていて、勤続年数が長くなるほど退職金の伸び率が高くなります。

厚生労働省(中央労働委員会)によると、大卒の人が大企業に勤めた場合の退職金(自己都合退職)は、勤続3年で約32万円ですが、勤続30年で約1707万円まで増額します。勤続年数の差が10倍に対して、退職金はなんと約53倍も差がつくのです。