とくに指摘しておきたいのは、本来、地域に落ちるはずの寄付金が、自治体や地場の生産者ではなく、手数料などの名目で中央の仲介業者にかすめ取られてしまっている実態だ。

ふるさと納税は、大都市圏から地方に税収の一部を移転させる仕組みなので、寄付を受けた自治体や地場の生産業者が潤うなら制度の本旨に沿っているが、仲介サイト業者への巨額流出は制度の欠陥ともいえる。

ふるさと納税の現状は、自治体が仲介サイトに返礼品を掲載し、利用者がネットショッピング感覚で返礼品を選び、決済も仲介サイトで完結するスタイルが主流になっている。利用者が直接、自治体の窓口に寄付するケースはきわめてレアという。

返礼品競争をあおってきたのは、ほかならぬ仲介サイトなのだ。

大きく変わった仲介サイトの勢力図

寄付受け入れ額上位の自治体の担当者によると、仲介サイトは、楽天グループの「楽天ふるさと納税」、ソフトバンク系の「さとふる」、IT企業アイモバイル系の「ふるなび」、老舗のベンチャーの「ふるさとチョイス」の4サイトによる寡占状態という。

ところが、最近は勢力図が大きく変わって、「楽天ふるさと納税」が圧倒的シェアを握るようになり、次いで「さとふる」が続き、「ふるさとチョイス」は影が薄くなっているという。

これは、寄付に伴い、独自のポイントすなわち「お得なおまけ」の付与を前面に打ち出す仲介サイトに人気が集まったためだ。

「楽天ふるさと納税」で寄付すると返礼品とは別に「楽天経済圏」の商品やサービスに使える「楽天ポイント」が貯まり、「さとふる」で得たマイポイントは「PayPayポイント」や「Amazonギフトカード」に交換できる。「ふるさとチョイス」が失速したのは、ポイント付与の特典が乏しいからにほかならない。

利用者は、お得なサービスに敏感に反応したのである。

仲介業者の懐に入る寄付金は2000億円規模

自治体と仲介業者の関係をみてみる。

仲介サイトへの返礼品出品の仲介手数料はおおむね12%程度。これに、決済手数料、顧客リスト管理費、販売促進費、広告宣伝費などさまざまな名目の業務委託料を加えると、寄付金の約20%を仲介運営業者に支払っている計算になるという。

言い換えれば、本来、自治体が自ら処理しなければならない実務を、受け入れた寄付金の2割も払って、仲介業者に丸投げしているのだ。仲介業者にしてみれば、本業のEC(電子商取引)プラットフォームの延長戦上での事業だけに大歓迎だろう。自治体は面倒な事務手続きから逃れられる一方、仲介業者には多額の寄付金が転がり込んでくるという、という持ちつ持たれつの関係にある。

多くの自治体にとって、仲介業者はなくてはならないありがたい存在であり、仲介業者からみれば、自治体は絶好のお客さんなのである。

寄付金総額が1兆円を超えた今、仲介業者が手にするあぶく銭は単純計算で2000億円規模となりそうだ。ふるさとへ寄付したつもりの利用者にすれば、実に不快なカネの流れと言わざるを得ない。