「時短」の時代に相性がいい

――令和の怪談ブームにはどんな特徴があるのでしょう。

たとえば、1990年代にも怪談が流行しました。『学校の怪談』が映画やアニメになってヒットしたり、小説家の中山市朗さんたちの『新耳袋』など、不思議な体験をした人に話を聞いて書いた「実話怪談」が注目されたりしました。

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しかし90年代には、怪談は、都市伝説や超常現象などとともにオカルトブームのジャンルのひとつに過ぎませんでした。70年代のオカルトブームでも同様で、ブームの中心はノストラダムスの大予言やスプーン曲げで、怪談ではなかった。

しかし令和のブームでは、オカルトではなく、怪談そのものに注目が集まっています。

とくに若い人にウケている。その理由は、コンテンツが短いこと。

講談や落語は、そもそも使う言葉や話の筋が難しい上に、長いと感じる若い世代が増えたようなのです。

一方で怪談は普段使いのカジュアルな言葉で話しますし、舞台もほとんどの場合が現代で親しみやすい。何よりも短い。

最近は怪談のコンテストがたくさん開催されるようになったのですが、次第に短く話す技術が求められてきて、ついに3分で1本の怪談を語るという規定のコンテストが登場しました。ツカミとオチをつけて3分間で話すのは難しいことですが、10分以内、5分以内の怪談はもはやスタンダードです。1分怪談というものまであります。

そうした“短いエンタメ”という点も、令和の怪談が流行る背景にはあるのではないでしょうか。

怪談とホラーの違い

――怪談には「ウソ」「思い違い」「作り話」というイメージを持つ人も多いかと思います。そもそも怪談とはなんなのでしょうか。ホラーと怪談は違うのですか?

怪談はなんでもありのエンタメなんです。怪談の“怪”は、「あやしい」を意味します。

あやしい話なら、すべて怪談と言っていいと私は考えています。

「実話怪談」と呼ばれる実際に体験した話や体験者から聞いた話だけではなく、創作した話も怪談として成立しますし、怖い必要もありません。

また、話のなかで、怪異現象や不思議な体験の原因が明かされなくてもいい。

実際、実話怪談には、オチがなくて、よくわからない話も多い。体験者本人が、なぜ、そんな不思議な経験をしたのかわかっていない場合も少なくないので。

曖昧で、不思議で、あやしい。そんなところも怪談の魅力です。

対してホラーの場合、最低限の条件は恐怖なのでは? 怖くなければ、ホラーとは言えません。また恐怖の原因がはっきりしている場合が多いのもホラーの特徴です。