4万ものアニメの頂点に立った作品

前回の記事では『鬼滅の刃 柱稽古編』の最終話が、米国の映像レビューサイトIMDbで最高評価を得たことを伝えた。

一方、本連載のデータ提供元であるMALには過去に放送された約4万作のアニメのレビューが収納されている。そこではScore8.74の『鬼滅の刃 遊郭編』でも48位に過ぎない。

上位には、『呪術廻戦2期』(8.81、33位)や『CLANNAD』(8.93、17位)、『銀魂ファイナル』(9.04、6位)、『進撃の巨人3期』(9.05、4位)、『鋼の錬金術師』(9.09、2位)と歴代の秀作として高い評価を得た作品が並んでいる。

いずれもこの20年ほどの収集できる範囲で海外ファンから高レビューを引き出した傑作ぞろいだ。

今シーズン、MALの4万もの作品の中で最高位1位のレビューをとった作品が生まれた。『葬送のフリーレン』である。83万人のMembers、681のレビューコメントのなかで最も高い9.34ものScoreをつけ、堂々1位となった(原稿執筆時)。

2020年から「週刊少年サンデー」にて、山田鐘人原作、アベツカサ作画というチームで連載が開始。2021年にマンガ大賞、手塚治虫文化賞、2023年に小学館漫画賞、2024年には講談社漫画賞と受賞づくしで、日本でも高い評価を受け続けてきた。そんな作品が、2023年冬に初めてアニメ化された。

画像=プレスリリースより

集英社や講談社ではなく、小学館による作品だったが、「次の鬼滅の刃を作る」と強い意気込みでアニメ製作委員会が結成され、大ヒット。現在、世界中で主人公のエルフ(妖精)であるフリーレンのコスプレブームが沸いている。

「バトル」「成長」「魔王」の要素が少ない

本作はまさにファンタジーRPG作品において、画期的な価値転換を図った作品といえる。RPGの世界から、「バトル」と「成長」そして「魔王」を端折った物語なのだ。

3000年は生きるとされるエルフの魔術師・フリーレンは、勇者ヒンメル一行に加わり魔王を倒した。しかし、その10年間は彼女にとって一瞬の「一期一会」に過ぎない。

年老いた勇者ヒンメルは第1話、同じパーティーだった僧侶ハイターは第2話で死亡する。フリーレンは、勇者たちと出会う前の1000年以上、人間に囚われることなかった。だから、彼女の人生においては「数カ月」に過ぎない彼らとの冒険の思い出を淡々とやりすごそうとする。

だがタイトル「葬送」が示すように、フリーレンは、勇者一行の冒険を振り返りながら、去っていってしまった者たちの言葉を思い出し、人生とは何かを追求し内省し続ける。これが本作品の概要である。

だから、どれほどの強大な敵(ドラゴンなど)が現れても数コマの闘いの描写の後、「今回は激しい戦いだった」のモノローグ一つで終わらせてしまう。

一見すると、「明確な目的はない旅」は、フリーレン自身の考え方や行動を少しずつ変えていく。人間に無関心だったはずが、若い魔術師・フェルンを弟子にとり、若い戦士・シュタルクとともに3人で旅をするようになる。