世帯収入や父母の学歴が子どもに与える影響

一方で、お茶の水大学の「平成25年度全国学力・学習状況調査(きめ細かい調査)の結果を活用した学力に影響を与える要因分析に関する調査研究」では、以下のような結果が示されている。

・世帯収入が多いほど、また父母の学歴が高いほど、児童生徒の学力は高い。
・学校外教育費支出が多い家庭ほど子どもの学力も高い。
・保護者の関与や意識は、児童生徒の学力と相関が大きい。

この研究では、学力は遺伝ではなく、親の経済力の影響のほうが大きいような印象を受けるが、親の年収が高いのは、親の学歴が高い(=学力が高い)ことが要因であり、親の学力の高さが、収入の高さと子どもの学力の高さにつながっている、という疑似相関である可能性がある。

実際、この研究では「学習時間のみで、家庭背景の不利を克服(逆転)することは難しい」とも指摘されている。

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子どもの「お友達環境」は住む場所で決まる

子どもの学力に大きな影響のある子どものお友達関係はどのようにして決まるのだろうか。

一人一人の子どもにはキャラクターがあり、子ども集団のなかでの役割は異なるが、「盗んだバイクで走り出す」友達に囲まれているよりは、「サピックスの上位クラスを目指している」友達に囲まれているほうが学力という面で有利なことは誰にでも想像がつくはずだ。

そのような状況には地域差がある。シンプルにその構造を言えば、お友達環境は住む場所で決まる、ということなのだ。

例えば、大学進学率には都道府県でも大きな差がある。文部科学省の「学校基本調査」の令和5(2023)年度の結果を見ると、大学進学率が高いのは、京都府の67.2%、兵庫県の65.6%、広島県の62.0%などで、大学進学率が低いのは沖縄県の44.1%、鹿児島県の45.0%、宮崎県の45.4%などとなっている。

市区町村別ではもっと大きな差があり、例えば東京都の「学校基本統計」の令和5(2023)年度結果を見ると、大学進学率が高いのは、国分寺市の91.2%、清瀬市の88.5%、調布市の88.3%などで、詳しく見ていくと大学進学率が50%に届かない市区町もある。

詳細には触れないが東京都などでは、もっと細かい小学校学区単位で見ても中学受験率に大きな差がある。