長時間労働をやめられない日本人に向けられた視線
テクノロジーとは別に、労働生産性の向上が停滞している理由として、労働倫理の問題が横たわる。米CNBCニュースは、日本では長時間労働が一般的であり、これが労働者の疲労を引き起こし、生産性を低下させていると論じる。
記事は、日本の労働文化には「過労死」(karoshi)という言葉が存在するほど、長時間労働が一般的になっていると紹介している。2016年の政府調査によれば、日本の企業の約4分の1が従業員に月80時間以上の残業を求めており、その多くは残業代が支払われていない。
また、オンライン旅行予約サイトのエクスペディアの調査によると、
東京の人材サービス会社であるスタッフ・サービスが2023年7月に実施した調査では、日本の従業員のうち、年間有給休暇を全て使い切る人は19%未満であることが明らかになった。特に43歳から52歳の世代では16%にとどまっている。43.7%は、休暇申請をする際に居心地の悪さを感じると答えている。
香港のサウスチャイナ・モーニングポスト紙は、日本では仕事を休んだ日に、オフィスで働いている日以上に気が休まらない、と述べる人さえいると報じる。
2040年ごろには新興国に追いつかれるとの予測も
日本経済の弱体化については、すでに20年以上前から海外で指摘されている。国際通貨基金(IMF)は2003年の報告書『Japan's Lost Decade(日本の失われた10年間)』の中で、日本の経済停滞の原因を多角的に分析している。1990年代初頭のバブル崩壊を皮切りに、株価や土地の価格が暴落。銀行システムと企業の会計に問題を残した。
2010年代に入っても回復の光は見えず、「失われた10年」と呼ばれた空白期間は、ついに「失われた20年」と呼ばれるようになる。2024年現在、いまや「失われた30年」と呼ばれる。少子高齢化社会の不利を補う先進的な技術を導入すべきところ、FAXに象徴されるように既存技術への依存が続いた。
2024年3月、経済産業省がまとめた資料『第3次中間整理で提示する 2040年頃に向けたシナリオについて』(PDF)では、危機的なシナリオが描かれている。従来通りの考え方ややり方を維持するだけでは、2040年ごろに日本は「新興国に追いつかれ、海外と比べて『豊かではない』状況に」となり、「社会の安定性すら失われる可能性」があるとする厳しい見通しだ。
同資料は、国内投資とイノベーションを重視し、所得向上の好循環につなげることで、「人口減少下でも、一人一人の所得が増え、可処分時間が増加」し、「豊かな社会を実現できる」と論じる。
「失われた30年」のきっかけとなったバブル崩壊自体は、日本の労働生産性と直接的な関連はない。しかし、少子高齢化社会を見据えて古い手続きや技術を切り離し、より生産的なテクノロジーの導入を進めてこなかった点は反省材料となりそうだ。