「お友達人事」はどの組織でも存在する

この情緒的で極端な告発の内容を見れば、Aさんが井戸前知事に近かった人物であることがわかる。

またこの告発から、Aさんは、2021年7月の知事選で、井戸前知事の後継者だった金沢和夫・前副知事(68)を応援したことも容易に想像できる。

知事選で金沢氏が敗れたことへのうらみがAさんの文書からはっきりと見えてくるからだ。

金沢氏が知事となっていれば、Aさんにとって理不尽な人事が行われていたはずもないからである。

告発の2番目では、知事選で斎藤知事を応援した県職員4人がトントン拍子に出世したことを地方公務員法違反だとしている。

4人が昇進したのは事実だろうが、それはAさんの個人的な恨みつらみを並べているに過ぎない。

Aさんは西播磨県民局長で定年を迎えるはずだった。出先の局長級でも県幹部なのだろうが、Aさんには不本意だったこともわかる。

金沢知事が誕生していれば、そのようなことはなかったのかもしれない。

どこの組織でも、権力者が変われば、それに伴う人事が行われる。

静岡県政でも、川勝知事の“お友だち人事”は有名であり日常茶飯事だった。

県立大学学長、県立美術館長やさまざまな要職に川勝知事の“お友だち”が就いている。

本庶佑氏に独断で県民栄誉賞を贈った川勝前知事

なかでも2018年にノーベル医学生理学賞を受賞した本庶佑氏に静岡県民栄誉賞を贈った経緯には驚かされた。

本庶氏は、2012年4月から5年間、県公立大学法人理事長に就いた。選考委員会などはなく、川勝知事の指示で任命された。本庶氏は静岡県と何らの関係もなかった。

週2回静岡県に来てもらって、月額約105万円の報酬を支払っていた。途中で本庶氏から週1回にしてくれとの要請があり、報酬は半額となった。

多額の報酬を支払っていた本庶氏が2018年にノーベル賞を受賞すると、川勝知事は県民栄誉賞を与え、県主催の祝賀パーティーなどを開いた。

写真=共同通信社
静岡県の川勝平太知事(左)から県民栄誉賞の賞状を授与された京都大の本庶佑特別教授=2019年2月26日夜、静岡市

ほとんどの県民は、本庶氏と静岡県の関係など全く知らない。

本庶氏の県民栄誉賞受賞は川勝知事のマッチポンプである。県民栄誉賞が川勝知事の「権限」で決まるのだから、誰も反対できなかった。

それに比べれば、兵庫県の財団の2人の副理事長を交替はそれほどの問題ではない。斎藤知事(あるいは片山副知事)のお手盛りであることに不思議を感じない。

人事などそんなものであり、誰が理事長、副理事長などの名誉職に就いてもおかしくないからだ。

1番目、2番目の告発文書を読めば、Aさんの個人的な恨みつらみ、不満でしかない。