再婚した頃、世間注視の「原爆裁判」も担当していた

ところで、優しい前夫・芳夫さんと、イギリス紳士型の乾太郎さん。タイプは少し違うかと思いますが、二人に共通しているのは、穏やかで物静かだったことのようです。やはり嘉子さんがパワフルで賑やかな方ですから、亭主関白的な男性はあまりお好みではなく、自身を理解してくれ、仕事にも協力的な男性の方を求めていらっしゃったのかもしれません。

佐賀千惠美『三淵嘉子・中田正子・久米愛 日本初の女性法律家たち』(日本評論社)

嘉子さんが乾太郎さんと再婚するのは、名古屋地裁から東京地裁に戻ったあとの昭和31年(1956年)8月。嘉子さんは東京地裁で、広島と長崎の原爆被害者が国を被告とする裁判を提起した「原爆訴訟」を担当しています。この裁判は1955年に始まり、9回の口頭弁論が開かれ、1963年まで続いた長く、注目度の高い裁判でした。

1963年12月7日には、東京地方裁判所が原告の請求は棄却しましたが、米軍の広島・長崎への原爆投下は国際法に違反すると記載した判決が下されました。出された判決は、担当の裁判官による合議体なので、嘉子さんだけでなく多数決で決めたものですが、再婚後の生活を送りながら、この重大かつ注目を浴びる事件も担当していたわけです。

今後、この原爆裁判が朝ドラで描かれるのか、もし描かれるとしたら、寅子はどんなことを考え、どんなことを話すのか。恋模様と共に気になるところです。

(取材・文=田幸和歌子)
関連記事
パンと白米よりやっかい…糖尿病専門医が絶対に飲まない"一見ヘルシーに見えて怖い飲み物"の名前
「血液型で病気リスクがこんなに違う」O型に比べ脳卒中1.83倍、認知症1.82倍…という血液型とは何か
不遇な梅子はなぜ「姑の世話」をキッパリ断れたのか…現役弁護士が感心した『虎に翼』の注目シーン
漢方薬の飲み過ぎで「大腸が真っ黒」になる…医師が「副作用に注意すべき」と警鐘を鳴らす漢方薬の名前
「タンパク質をとるのにこれに勝るものはない」医師・和田秀樹が高齢者に強く勧める食材の種類