スタジオジブリの唯一無二の“財産”

2022年、日本のメディア業界に激震が走りました。民放テレビ局の雄、日本テレビ放送網がスタジオジブリの株式の39.8%を取得し、資本業務提携を結んだのです。

この大型買収には、日テレの明確な戦略的意図が込められていました。

第一の理由は、言うまでもなく、スタジオジブリが持つ強力なコンテンツ資産の獲得です。

となりのトトロ」「もののけ姫」「千と千尋の神隠し」――スタジオジブリが生み出してきた作品群は、日本のみならず世界中で愛され、高い評価を得ています。まさに国民的アニメーションと言えるでしょう。

これほど強力なIPを自社グループ内に取り込むことができれば、二次利用を含めた様々な展開が可能になります。テレビシリーズや映画の製作、キャラクタービジネス、テーマパークとのタイアップなど、収益機会は無限大。日テレにとって、ジブリ作品は計り知れない価値を持つコンテンツ資産なのです。

トトロの人形を持つ日テレの杉山会長と鈴木敏夫氏(日本テレビプレスリリースより)

日本のアニメの中でも絶大な人気を誇る

第二の理由は、アニメーション事業の強化です。

世界的にアニメ市場が拡大を続ける中、日本のアニメはその中心的な存在として注目を集めています。特にジブリ作品は、老若男女を問わず幅広い層から支持され、海外でも絶大な人気を誇ります。

そのジブリと直接つながりを持つことで、日テレのアニメ事業は大きく前進するはずです。技術やノウハウの共有はもちろん、ジブリ作品を梃子にした新規事業の展開など、シナジー効果は計り知れません。

例えば、ジブリパークのアトラクションとタイアップした体験型コンテンツを制作したり、VR技術を使って作品の世界観を再現したりと、アニメーションの新しい楽しみ方を、日テレの総合力で創出していくことができるでしょう。

そして第三の理由が、コンテンツのグローバル展開の加速です。

Netflixに代表される動画配信サービスの台頭により、良質なコンテンツへの需要は世界的に高まっています。その中で、日本アニメーションの存在感は日に日に増しています。中でもジブリ作品は、国境を越えて多くの人々を魅了するグローバルコンテンツの最たるものと言えるでしょう。

その『ジブリ』ブランドを手中に収めたことで、日テレは一気に国際市場への展開力を高めることができます。ジブリ作品の世界配信を皮切りに、共同製作や商品展開など、日本のアニメを核としたグローバルビジネスを加速させていくことが期待されます。