「長く・よく視る力」はヴァージョンアップできる

ただし、大人になってからでも近いところを見すぎたりすると、近視が進行することがあります。

「ものを見る」行為について説明しましょう。ものを見ようとするとき、眼球にあるレンズ(水晶体)の厚さは自動的に調節されます。そしてピントが網膜に合ったとき、私たちは「よく見える」と感じます。

しかし、近くばかり見ていると、遠くを見たときに網膜ではなく、その手前でピントが合う目になってしまいます。その結果、遠くにピントが合いにくい目、つまり遠くが見づらい目になるのです。

また、本来水晶体は透明なのですが、加齢にともなって濁ったり、屈折率が変わったりすることも、近視の進行と関係します。

このように視力は、生活習慣や加齢によって遠くが見えなくなったり、近くが見えづらくなったりするものですが、年齢を重ねても「長く・よく視る力」を更新していくことは可能です。

中高年以上になっても、目の条件を整えれば「長く・よく視る力」は確実にヴァージョンアップできるのです。

写真=iStock.com/PonyWang
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「デコボコ目」は万病のモト

しかし、どんなによく見える目でも、目の表面(角膜)がデコボコになっていると、遠くも近くも、きちんときれいには見えません。

角膜は、黒目を覆う透明な組織。視覚の情報となる光を目に取り入れる最初の部位で、とても大事な「目の入り口」です。

角膜の表面は、常に涙で覆われている。なぜなら、ほこりやごみ、乾燥などから守る必要があるからです。そして私たちは、この涙のベールを通してものを見ているのですが、目の表面がじゅうぶん潤っていることで光がうまい具合に屈折し、ものがよく見えるのです。

しかし、涙の量が減ると、角膜上にあるゴミをうまく取り除けなかったり、角膜表面からなめらかさが失われてデコボコな状態に。すると、光をうまく取り込めず、ものが鮮明に見えなくなってしまいます。

私は2015年から毎年、計1万2000人以上の患者さんの目の乾き具合を記録しています。デコボコな目については、2015年は全体の約5割、2022年は約7割の人の目がその症状になっていることがわかりました。