たった10年で中間層の未婚男性が大量に発生
「若い家族世帯の世帯年収があがったのは夫婦の共働きが増えたからではないか」と思うかもしれません。では、就業構造基本調査より、妻の年齢別の夫の個人年収を、2015年をはさんだ2012年と2022年とで比較してみましょう。夫婦は子の有無両方を合算しています。
結果は以下の通りです。
妻が20代×夫個人年収500万円以上、妻が30代×夫個人年収600万円以上の場合は、2012年と2022年とで夫婦数はまったく減りもせず、変わりません。
妻が20代の場合で夫婦数がもっとも減少したのは、夫個人年収150万~300万円、妻30代の場合では夫個人年収300万~400万円です。対して、2012年には最頻値だった中間層年収の夫が、10年後の2022年にはごっそり結婚できずに未婚のままとなっています。
夫婦数の増減は、そのまま婚姻数の増減と等しいわけですが、ここからわかるのは、婚姻数が減ったのは、年収中間層の男性が結婚できなくなっているためだとわかります。
フルタイム妻が増えないまま、男性の結婚年収は上昇中
夫婦共働きが増えたとはいっても、結婚後のフルタイムで就業し続ける妻の割合はせいぜい3割程度で、これは1980年代から一貫して変わっていません。増えているのはパート就業の妻です。
それは、2022年の就業構造基本調査においても、35歳以上の既婚女性の年収中央値がきっちり130万円程度という扶養の枠に収まっていることからもわかります(〈だから40代以上の未婚人口は史上最大に…昔は当たり前だった「年収300万円台の結婚」が成立しない本当の理由〉参照)。
2020年の国勢調査段階でも、末子0歳児を持つ20代母親の6割近くが専業主婦になります。夫婦合意の上なのか、そうせざるを得ない事情によるものなのかはそれこそ夫婦によりますが、結婚・出産をして、子育てもしながらフルタイムでバリバリ仕事できる妻というのは、せいぜい3割程度であり、いずれにせよ、結婚して子どもが小さいうちは夫の一馬力になる夫婦が多いことを示唆します。
そうした時を考えて、結婚相手に対し一定以上の年収を求めることは女性にしてみれば当然のことなのですが、問題は、かつては300万円台の中間層の男性年収でも結婚できていたものが、直近10年くらいで急にそのハードルがあがり始めてしまったことです。わかりやすく言えば、今起きていることは「男性の結婚年収のインフレ」です。