――なぜイランでは「コネ社会」になったのでしょうか。

革命前の王政時代からイランはコネ社会でした。王政時代のイデオロギーは基本的には世俗主義ですから、今とは真逆です。だから現在力を持っているような宗教至上主義だと、当時は出世できなかった。

逆に頂点に立つ国王、王族と繋がっている人たちは出世コースに乗ることができた。なぜなら王族たちは、ポストを牛耳るだけでなく、国営企業などを通じて、経済もがっちり握っていたからです。それが革命後も形を変えて残っているのです。

イラン人は見栄っ張り、学歴詐称は当たり前

――イランの人たちはどんな人たちなのでしょうか。『イランの地下世界』では「リア充アピール」が大好きだと指摘していますね。

それは日本人の比じゃないですよ(笑)。イラン人は、基本的に自分を実際よりも良く、大きく見せたい人たちなんです。そういう意識が常に働いています。

先日、インスタグラムに面白い投稿がありました。「全てのイラン人が専門家である」という自虐的な言い回しなのですが、要するに、イラン人は「自分は何でも知ってる」と常にアピールすると言いたいわけです。

例えばカメラ。自分が何一つ知らなくても、知ってるふりをしないと恥ずかしい。メンツが保てない。だから知りもしないのに、「カメラはやっぱりSONY」「昔持ってたよ」と適当なことを言って知ったかぶりをする。それがイラン人だと(笑)。実際にみんなそうなんです。それが当たり前だから、嫌だとも変だとも思いません。

日本では小池百合子・東京都知事の学歴詐称疑惑が話題になりましたが、学歴詐称なんてイランでは当たり前です。コネを使って学歴詐称をするんです。住所についても同様で、例えばアメリカに移住すると、SNSで「俺はビバリーヒルズに住んでいる」などと発信する。本当は端っこのビバリーヒルズとは言えないようなところに住んでいたとしても、そう発信するんです。見栄を張るんですね。

撮影=プレジデントオンライン編集部
インタビューに応じる若宮氏

若者の間で美容整形が大流行

──話を伺っていると、若宮さんはイラン人が嫌いなのではと思ってしまいます。

いやいや、そんなことはないですよ(笑)。大好きです。でも、彼らが見栄を張るのは事実です。例えば、道端にベンツやポルシェが停めてあると、イランの人たちはその前でよく自撮りをして、いかにも自分の車であるかのようにSNSにアップします。これはよくやっているんです。

──イランでは美容整形が盛んなようですね。

これも見栄を張ることと関係しています。イラン人の場合は、自己肯定感の低さも関係していると考えています。

イランはコネ社会ということもあって、今の自分に満足できない人がたくさんいるわけです。そのフラストレーションをどこで発散させるか、どこで自分を肯定するかを考えた時に美容整形が手っ取り早い手段になっているわけです。