アメリカは株高を維持するために利下げする

――一方でアメリカの利下げも為替レートに影響を及ぼすと思いますが、いかがでしょうか。

【エミン】ひょっとしたら年内に2回の利下げがあるかもしれないと思っています。アメリカはアメリカでさまざまな問題を抱えているからです。日本ほどではありませんが、同じような問題を抱えています。

アメリカもいま、年間の国債の利払いが1兆ドルを超えてきています。これ以上の金利上昇は、アメリカにとっても相当に厳しくなります。もう1つ、いまの株高を維持したいでしょうから、その意味でも利下げはすると思います。

ただ、いままでの状況を見ると、1、2、3月の雇用統計の数字がきわめて強かったですし、CPI(消費者物価指数)も強かった。ただ、4月の数字は弱くなっていましたから、ここからアメリカの雇用統計の数字が悪化してくるんじゃないかなと思いますね。

ただこれは、はっきり言って出来レースなんですよ。実はこれまでも本当の数字はそこまで良くなかった。ヘッドラインの数字はきわめて強かったけれど、中身は悪かったのです。

ここにきてヘッドラインの数字も悪化してきているのは、これもおそらく選挙対策だと思う。これ以上はヘッドラインの数字を強く見せる必要がない。それよりも利下げの口実をつくったほうがいいということでしょう。

そうなると、この前の雇用統計も悪かったし、CPIも月次では予想よりは弱かったので、もう1、2回悪い数字が出ると、利下げの口実にはなると思う。9月と12月に利下げする可能性があるのではないか。

撮影=遠藤素子
「アメリカは9月と12月に利下げする可能性がある」とエミンさん。

アメリカのインフレを退治するには利上げが必要

――パックンさんはいかがでしょう。

【パックン】難しいな。アメリカ人はいま、雇用よりも物価上昇を気にしていると思うんです。選挙に向けて雇用を増やすよりも、物価上昇を抑えるほうが政権にとっては大事ですよ。物価上昇を抑えるには利上げが必要です。

だからFRB(連邦準備制度理事会)が利下げを考えるか、利上げを考えるか、もしくはホールドを考えるか。FRBにとってその判断は選挙対策ではないと思いますけど、アメリカ人の国民感情を考えると、株も元気だし、雇用統計も悪くない。だったら物価上昇を抑えてほしいと思う人が多いと思う。

さきほども住宅の話題が出ましたけど、いまのアメリカは家賃もすごく高いです。住宅の購入価格だけでなく、家賃もバカ高いから、利下げで住宅ローンの金利が低くなって不動産価格が上昇するようなことが起きれば、アメリカの国民は「実体経済が悪い」と感じます。

FRBは選挙がなくても国民感情をそれなりに気にしていると思います。だから7月に利下げする確率はけっこう低いでしょう。でもわからない。ブラックボックスです。

【エミン】インフレを本当に気にしているのであれば、利上げをしなければならないですね。

【パックン】本当はね。でも、利上げするほどのインフレじゃない。ただ、利下げをするとインフレになってしまう。そういう考え方だと思います。