庶民の「路上ギャンブラー」が増加

香港旅行がなぜ「日帰り」かといえば、店が完全に休みとなって買い物ができないからである。また、香港ディズニーランドはアトラクションが少なくて魅力に乏しく、幸運の占い、神頼みは黄大山へ行く。そもそも香港人は自由を弾圧されたため、中国人を歓迎しない。

代わりに中国人が集中したのはマカオだった。通年でも一日平均12万人の博徒ばくとが襲来するが、旧正月は一日平均20万人、旧正月5日間で90万人にものぼった。不景気だと、逆にギャンブラーが増える。

宝くじ売り場が増えた。ショッピングモールから地下鉄の出入り口、路上、ついには宝くじつき喫茶店も登場。3分の1ほどがスクラッチオフ(インスタントくじ)だ。中国には公営ギャンブルとしての競馬、競輪、競艇がない。パチンコもないから庶民は小銭を賭けあって路上でトランプで遊ぶ。金持ちはマカオへ行く。公営の宝くじは「福祉籤」、「スポーツ籤」、そしてスクラッチオフである。

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2023年の宝くじ売上げは、じつに37%増となって、806億ドル、日本円で12兆円を突破した。日本の宝くじ売上げは2022年度統計で8324億円だから、中国の宝くじ売上げは日本の12倍強となる。いかに異常な数値であるかが分かる。若者の就職難ストレスが大きな原因という。

「爆買い中国人」は消え、売れ筋も変化

海外旅行の行き先はタイ、次にマレーシア、シンガポールである。いずれも中国人にはビザは不要。コロナ禍以前、中国人のアンケートで「一番行きたい国」のトップは日本だった。

2019年のピーク時、中国人の日本旅行は960万人だった。2023年は回復基調だったといえども往時の4分の1の240万人だった。

インバウンドを期待した旅行業者の思惑は大きくはずれ、ツアー客が殆どいなくなった。個人旅行が増えたのはビザの関係と言われる。日本において嘗ての「爆買い」はなくなった。来日客は宝石、宝飾品、骨董に狙いを定めた。たとえば年代物のウイスキー。昭和の郷愁が残るフィルムカメラも骨董品とされ、彼らの投機対象となる。

一本30万円もする包丁に名前を彫ってもらう一点買い。ブランド物もまだ人気があるが換金能力の高い順番に物色しているのが実態だ。日本製の日常実用品も人気がある。とくに医薬品、それも目薬から胃腸薬、化粧品、オロナイン軟膏の人気は高く、ドン・キホーテでは「消せるボールペン」やステンレスボトルなど、日本人にはあまり興味をひかれない品物が売れる。