乱婚種が一夫一妻制になる遺伝子がある

このことを確認した研究者たちは、ハタネズミのつがい形成に関連する遺伝子を導入することで、乱婚種を一夫一妻制にできるか調べようとした。この遺伝子を乱婚種のマウスに導入すると、それまでは様々なマウスに求愛していたにもかかわらず、突然特定のマウスに執着するようになった。研究者たちは他の種でもまったく同じ実験、つまり乱婚種の動物を一夫一妻制にする実験を行った。結果は同じであった。

最も興味深い発見の1つは、つがいの結びつきの強さに寄与する特定の遺伝子が存在することで、この遺伝子はどれだけ一夫一妻制を続けられるかに影響する。

ヒトは一夫一妻制なのか、それとも乱婚種なのかという問いの答えを探し続けていると「不倫――いつ、どこで、なぜ」という興味深い研究論文に出くわした。これは、人が何に惹かれるかに影響を与える、さらなる要因について説明している。

共通の遺伝子を多く持つカップルほど浮気しやすい

典型的な“汗ばんだTシャツ”の実験では、研究者たちは様々な男性が着用したTシャツの匂いを女性に嗅がせた。その後、女性たちに最も惹かれると思うTシャツを選んでもらった。

写真=iStock.com/DiBerticus
※写真はイメージです

興味深いことに、それぞれの女性がお気に入りとして選んだTシャツは、免疫系の特定の部分にその女性とは異なる遺伝子を持つ男性が着ていたものだった。汗をかいたTシャツに含まれる女性に影響を与えた物質はフェロモンと呼ばれ、体内で生成される化学物質である。フェロモンは皮膚から汗として分泌され、周囲の空気中にしばらく漂う。

ニューヨーク、ロンドン、ロサンゼルスで“フェロモン・パーティー”が企画されたことがあった。参加者は4日間、毎日新品のTシャツを着て眠り、着用者のフェロモンを吸収したTシャツはジップロックバッグに入れられる。

このイベントは参加者が「嗅ぎ分ける」ことで完璧な遺伝子によるマッチングを行うのだ。ただこの戦略がどの程度、成功したかについての数字はない。分かっているのは、自分と似た遺伝子を持つ男性と結婚した女性は、浮気する確率も高いという研究結果があるということだ。

つまり自分と似た遺伝子を持つ男性をパートナーとする女性は、自分とは異なる遺伝子を持つ男性と浮気をするのだ。「パートナーと共通の遺伝子が多ければ多いほど浮気する可能性が高まる」というのは、シンプルに言ってしまうと、浮気は問題解決――パートナーと同質の遺伝子が多すぎるという問題の解決――のための無意識の戦略となっていると言える。

免疫システムにおいて、似たような遺伝子が多すぎるということは、妊娠や生殖能力に関わる合併症のリスクの増加を意味するからだ。