自己内省し、組織で共有できる力が必要

システムリーダーが用いる二つ目のコンピテンシーが「生成的な対話を促す能力」です。カギになるのは内省の能力です。内省は、自分の思考について考察し、自分ですら囚われていることに気づいていなかった呪いについて意識的になることを可能にします。

その内省の結果を各人が他者と共有することで、組織や個人からなる集団がそれぞれの異なる意見を本当の意味で聞き、互いの見ている現実を認知的だけではなく、感情的にも理解し合うことが欠かせないステップとなります。

システムリーダーが用いる三つ目のコンピテンシーが「リアクティブからアクティブへとフォーカスを移す能力」です。

クリティカル・ビジネスのアクティヴィストは、常に望ましくない状況を起点にしてイニシアチブを立ち上げます。多くの場合、このようなイニシアチブは、目の前の問題に局所的、かつ反応的に対処することになりがちですが、システムリーダーは、集団が、問題への対処に終始するのではなく、前向きな未来のビジョンを作り出すことができるようにファシリテートします。

写真=iStock.com/Delmaine Donson
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一流のリーダーは、他者に達成させる

言葉を変えて表現すれば、システムリーダーは「自らの手でアジェンダを解決すること」を志向しないということです。なぜなら、このようなアプローチでは大した成果が得られないということをよく知っているからです。システムリーダーは、変化が生まれ、変化が自律的に継続するような場を生み出すこと、に注力します。

、山口周『クリティカル・ビジネス・パラダイム 社会運動とビジネスの交わるところ』(プレジデント社)

いまからおよそ2500年前、システムリーダーの理想について述べた賢者がいます。

悪いリーダーは、人々から蔑まれる。
良いリーダーは、人々から敬われる。
最高のリーダーは、人々に「私たちがやった」と言わせる。

老子のこの言葉は、クリティカル・ビジネスのイニシアチブをとるリーダーにとっても、非常に示唆に富んだものだと思います。

クリティカル・ビジネスが、その定義上、これまで解決されることのなかった社会的問題にアドレスする以上、その問題は複雑なシステム問題であることが少なくありません。

クリティカル・ビジネスのアクティヴィストはすべからく、システムリーダーとしてのコンピテンシーを果たさなければならないのです。

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