目的を達成するためなら手段を選ばない

国際社会の一部には、ロシアに対して間違った認識を持っている人がいます。日本でも政治家、記者、有識者の一部に見られます。それは本当に恐ろしい間違いです。

ロシアは今までも、今も、想像以上に残酷で反人道的な帝国です。その帝国の中で、自分たちの課題を達成するために手段を選ばず、何をしてもいいと考えています。

日本でも「偉大なロシア文化」(Great Russian Culture)という表現を聞いたことがあるという人がいると思います。この表現はナンセンスです。ロシアの文化は基本的に無いんです。皆さんに知られているのはロシアという帝国が占領した他の民族から奪った文化・遺産です。共産主義国が得意とするプロパガンダに利用しているにすぎません。

日本の皆さんにはあまり知られていないかもしれませんが、これらの手法はロシアだけではなく、他の共産主義国でも使われてきました。私が29歳になるまで、ウクライナはソ連の一部でした。ソ連の時代を経験していますので、この手法をよく覚えています。決して皆さんは錯覚しないでください。

写真=小峯弘四郎
ロシアは目的達成のためなら手段を選ばないと指摘するコルスンスキー大使

「北方領土を返してほしい」と言うほどロシアの深みにはまる

しかし、こうしたロシアを止めるための策はいまだにありません。ロシアは力の論理で物事を進めます。ロシアより弱い国には必ずその弱みを利用して、支配下に収めます。相手を常に敵国として扱い、平等な関係を構築する考えはありません。

唯一、ロシアと友好関係のようなものを構築できる時は、ロシアが支配下に収めている時だけです。友情などではありません。日本がロシアに「北方領土を返還してほしい」と言えば、それは日本の弱みになります。その弱み手を最大限に利用するのがロシアの手法です。言えば言うほどロシアの深みにはまり、利用されます。

ロシアの人口は日本と同じくらいですが、国土面積は広大です。そこには多くの資源があるにもかかわらず、ウクライナやジョージアを手に入れようとしています。北方領土も必要としています。ロシアには一般的な常識は一切通用しません。

※2008年、ロシアはジョージアのアブハジアと南オセチアに侵攻し、占領した。2014年にはウクライナ政変の隙を突いてクリミアを併合、ドンバス地方で親ロシア派とウクライナ政府の武力衝突が始まる。ロシアの侵略はこの時から始まっている。