目当てのぬいぐるみがある座標軸を把握してみる

こんなとき、図表1内の太い矢印線で示したようなx軸とy軸とz軸がゲーム機に付いていれば便利です。「x軸が3、y軸が4、z軸が0のプライズが欲しい」と、確実に友人に伝えることができます。これは「座標」を使った目標の設定方法です。図表1のx軸は左右の位置、y軸は奥行き、z軸は上下の位置を示します。

そう、座標はプライズの位置を指定するのにとても便利なのです。どの座標にUFOメカを移動すれば良いかが正確になり、目標とするプライズゲットの可能性が高まると思っています(もちろん、実際のクレーンゲームには、座標は表示されません。そんなにプレイヤーに都合の良いゲーム設定は、されていないんですよね……)。

4月、大学1年生向けの私の授業では、物体の位置を指定する座標の話をします。

私は、ゲーセンでクレーンゲーム機の前に立つと、図表1内の3本の矢印のような、右手系直交座標系のイメージが脳内に浮かびます。ゲーム機の正面に立ち、左右方向水平にx軸をとり、奥行き方向にy軸をとり、プライズの落とし口を座標の原点O(x,y,z)=(0, 0, 0)とする、右手系の直交座標です(図表2)。

筆者作成(出典=『クレーンゲームで学ぶ物理学』)

クレーンを横軸→縦軸→上下に動かして景品を左右から挟む

右手系直交座標系のイメージを脳内に浮かべる一方で、私の目には、箱の中のプライズが輝いているように見えます。例えば、かわいらしいぬいぐるみが、眩いスポットライトを受けてフィールドの上にちょこんと座って、つぶらな瞳でこちらを見つめている。「お願い、ぜひ、とって!」――、そんな声まで聞こえてきます。

もちろんプライズが話しかけるなんて、物理学的に絶対にありえません。でも私には、ゲーセンのイケイケ系BGMが鳴り響く中でも、他人には聞こえない彼らの声が聞こえるのです。そしてその声に応え、私はポケットから100円玉を取り出し、そっと投入口に入れてしまいます。「あぁ、やってしまった」と思っても、一度投入した100円はもう返ってきません。

気を取り直して、ここでまず私が確認すべきは、つぶらな瞳をしたプライズの位置。仮に座標(x,y,0)としましょう。次に私が決定すべきは、UFOメカを配置する位置。仮に座標(x1, y1, z1)とします。これはプライズの位置より上方ですね。そして私がやるべきは、①横方向の移動ボタンを押しUFOメカをx軸上にある狙った座標まで移動させ、②奥方向の移動y軸上にある狙った座標まで移動させ、③UFOメカが狙った座標に到達したらすぐにボタンから手を離す。これだけです。