横に動かしたクレーンが十分に停止してから縦移動へ

ただし①から②の動作に、すぐに移ってはいけません。①の後、UFOメカが十分に静止したのを確認し②の動作に移ります。これを怠るとUFOメカは大きく揺れながら降下してしまい、狙ったプライズの位置(座標)から誤差が生じ、外れてしまう可能性が出てきます。

この静止の時間は私にとって、呼吸を整えて冷静になるための時間でもあります。

――よし、ここまで私のすべき人事は尽くした。あとはUFOメカがz軸に沿って、降りていくのを見守るだけだ(高さ決定ボタンのあるゲーム機もありますが、ここでは割愛)。

UFOメカがプライズの座標(x,y,0)に向かって、z軸方向に沿ってゆっくりと降りていくプロセスは、図表3の①~④のように進みます。

筆者作成(出典=『クレーンゲームで学ぶ物理学』)

まず、UFOメカの左右のアームがゆっくりとそして大きく、グァーっと開き、UFOメカが「よし、いくぞ!」と叫んでいるような態勢に入ります。両アームを大きく開いたUFOメカは少し揺れながら、着実に降りていきます。その様子はまるで、1969年、NASAのアポロ11号月着陸船「イーグル」が着陸スタンドを開いて、ゆっくりと月面に向かって降りていくかのようです。手に汗握るとはこのことか! まさに天命を待つ長~い時間、心の中で「お願い!」と強く念じます。そして運命の時です。結果は、いかに……⁉

クレーンが景品を抱きかかえて上昇できればゲットの確率は高い

脳内シミュレーションはこれくらいにして、話をクレーンゲームと座標に戻しましょう。

プライズの真上である座標(x1, y1, z1)に到達したUFOメカはz軸に沿って下降し、やがてフィールドに到着します。ここでうまくいけば、開いた両アームがプライズの両側に配置されます。UFOメカは両アームを閉じながらz軸方向に上昇。うまくいけば、つぶらな瞳のプライズを熱く抱きかかえて上昇します。

その後、メカはz軸方向に上昇できる上限である座標(x1, y1, z1)に達し、再び、決められた位置へ。座標(0, 0, 0)であるプライズの落とし口の、真上に向かって移動し、最後に両アームをゆっくりと開きます。

いかがでしょう? このように座標で場所を指定できれば、客観的で誰にでもわかるように移動の過程を解説し、それぞれの位置を正確に伝えることができますよね。