トレンドワード「#子持ち様」
「SNSは少数派の意見が一気に拡散されて、多数派の意見のように見えることがあるし、“産休クッキー”への批判は、顧客層となる方々の声ではなかったのだろうと思います。世の中に蔓延している不満のはけ口として、うちのクッキーが使われたのかなと思います」
と、瀧口さん。「不満」とは、一体何を指すのか。
「私の身内にも、子どもが欲しくてもできなかった人がいますが、今の日本はそういう方々へのケアが足りていないのではないでしょうか。不妊治療の費用を助成する自治体は増えていますが、お金を出す以前に、治療する上での年齢的な制限などの基本的な知識を学校で教えていれば、手遅れになってしまって悲しい思いをする女性は減るのに、と思います」
今回やり玉にあがった“産休クッキー”だが、瀧口さんは「販売をやめる気はない」と、きっぱり。子どもが産まれることを祝う気持ちや、産休制度自体を否定するような論調に迎合するのは不本意だと考えているからだ。だが、妊娠した女性への憎悪ともとれる声をどう受け止めればよいのか、正直戸惑っているという。
「Xの炎上を見たお客さまから、『生きづらい世の中ですね』『誰も悪くないのに』という心配の声が届いたのですが、その通りだなと。自分自身の不妊治療がうまくいかなかったからといって、全員が子ども嫌いになるわけではないとは思いますが、この風当たりの強さは一体どうすればいいのか……。おかし屋にはちょっと荷が重いです」
最近では、子育て中の女性をうらやんで攻撃する「#子持ち様」というワードもXでトレンド入りした。心ないトレンドワードが露呈する、母親や子どもに対する冷たい眼差しは、この国の少子化の一因になってしまってはいないか。
(AERA dot.編集部・大谷百合絵)