日本と世界の“年功序列”の決定的違い
【海老原】最初に、「日本人の常識は欧米の非常識」という話をしておきます。その核心部分は、「長く勤めれば給与が上がる」ことがいかに特殊か、ということです。亡くなってしまわれた小池和男さんという労働経済学者が、日本も欧米も、年功で給与が上がるのは同じだと示されました。
そう、確かに世界どこでもホワイトカラーの平均給与で見れば、年功カーブは存在します。でも、そこには2つの大きな違いが存在します。1つは、欧米は日本に比べて年功カーブが緩いこと。もう1つは日本では正社員全員が同じように年功カーブを描きますが、欧米は一部のエリートと、その他の人たちで給与レンジが大きく異なること。
フランスの階級社会
たとえば、フランスにはグランゼコールというエリート養成校出身のカードルと呼ばれる少数のエリート層がいますが、彼らは20代後半でもう4万300ユーロ(1ユーロ150円換算で約615万円)で、50代後半だと7万7000ユーロ(同1150万円)にもなります。一方、普通の大学を出た中間的職務層と呼ばれる人たちは、20代後半で3万ユーロ(同450万円)、50代でも4万1000ユーロ(615万円)。
ちなみに、フランスなどの西欧はどんな職業に就くにも「資格」が必要です。パン屋さんや八百屋さんも、その資格を持つことが前提となります。資格を取るには、それに相当する学歴と職業訓練が必須です。こうして資格を取って働く「資格ワーカー」と言われる人たちは、若年時2万5000ユーロ(375万円)、50代後半でも2万8000ユーロ(420万円)に留まります。それぞれが決められた職分で、それに相応な給与レンジに留まるという、まさに、階級社会ですね。ワーカー層が、大学入り直しや資格取得をせず、単に昇進を重ねて、中間的職務やカードルになる、ということなどまずありません。