「働く意味」をつくるのがリーダーの役割

自由で、枠にはまらない「無重力リーダーシップ」に求められるのは、まさにその部分だ。つまり、チームや組織のメンバーに「働く意味」をつくることである。「べき論」を押しつけるのではなく、相手自身に気づいてもらうこと。どうするべきかの答えは、あくまで相手のなかに隠されている。

もちろん、それは簡単ではない。そもそも、その「意味」は自分自身に見えていないケースがほとんどだし、だからこそ、お金、出世、家族など、「自分以外のもの」にすがりついてしまうのだろう。それぞれの送ってきた人生、現在の立場、理想とする価値によってもバラバラだ。

たとえば、人生において「勝ち負け」をもっとも重視する人の場合、働く意味は個々のビジネスで勝利することである。そのためには他人を押しのけてでも成功する結果こそ望ましいが、逆に人生における価値を「調和」に置くタイプであれば、ときには自分が縁の下の力持ちになって仲間と成功を分かち合うことに、意味を見出すはずだ。

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昭和時代のブラックなやり方とは違う

ぼくは「働く意味」として、どちらもアリだと思う。他人を押しのけてまで「勝ち」をつかむ人も、チームの成果より「和」を重んじる人も、それぞれ流儀が違うだけだ。

それに人というのは、置かれた状況やそのときのメンタルによって、普段とは大きく違う行動をとることもよくある。いつもは温厚で通っている人物が、突然自分がコントロールできなくなってブチ切れるとかがいい例だ。

無重力リーダーシップでは、そんな人間ならではの不安定な部分も含め、周囲の一人ひとりに「働く意味」をつくっていってほしい。

ただし、リーダーが「意味をつくる」といっても、それは「会社や組織のために機械のように働け」と「洗脳」することではない。

昭和時代のリーダーやコンサルタントの一部では、いまでもそうした無茶な洗脳をよしとする向きがあるようだが、そうしたブラックなやり方は、スポーツでいえばドーピングのようなもの。一瞬は効果があるように見えても、じきに不正などの大きな問題を起こしたり、指示待ちのロボット社員ばかりになったり、先は知れている。