「将来なにしたい?」に対する子どもの回答
もしもみなさんが「お金」「出世」「家族」などと答えたのであれば、それは自分の「働く意味」がわからず、その代用品として「お金」や「出世」「家族」を持ち出しているだけだ。今日のビジネス現場が行き詰まっている原因も、おおもとはこの点にある。
あるとき小学生の息子に、「しいしいは将来、なにしたいの?」と聞いてみた(「しいしい」は彼のあだ名)。
「社長になりたい」
「いいやん。なんでそう思ったの?」
「だってパピー、社長でしょ? ぼくも社長したい。仕事、おもしろそうにやってるじゃん」
一方、中学生の娘に聞いてみた。
「ある(娘のあだ名)は将来、なにしたいの?」
「えー、ぜんぜんわかんないよ」
「そっか、まあいいんちゃう? これからいろんなものに触れていけば」
「そうだねー。でも、パピーの会社みたいな会社で働きたい」
「うれしいこと言うねー。でも、なんでそう思ったの?」
「心理学とかちょっと興味あるし、なによりミーティングとか? すごい楽しそうじゃん?」
働くことの楽しさを「教育」している
礒谷家では、働くことは決してネガティブなものではなく、趣味みたいなものという価値観だ。嫌なことがあっても家族に愚痴を言うのではなく、意見をもらったり相談したりする。
とにかく「働くことは楽しい」と感じてもらいたいので、息子にコンビニでコーヒーを買ってきてもらい、購入プロセスに10円の手数料を乗せて支払い、その差額をうれしそうにお小遣いにしている姿を見たり、仕事でうれしいことがあれば、娘と腕を組んでその話をしながらトイプードルの散歩をしたりするのが大好きだ。
人間は、ほかの動物とは根本的に違う。ただ食べて、寝て、子孫を増やせばそれで満足できるわけではない。
一人ひとりに必ず生きていく意味があり、それを自覚できなければ、真の満足を得ることはできない。なかなか厄介な生き物だが、だからこそぼくらは働くうえで、単なる「なんのため」にとどまらず、一歩進んだ「意味」を自分自身でつくる必要がある。