次に、「毎週月曜日の10時から10分くらい、口頭でちょっと進捗を聞かせてもらっていい?」というように、定期報告をいつどのように行うかを部下と話し合って決めます。このとき、手助けすべき部分があるかどうかもすり合わせてください。部下が自ら報連相に来ることは期待せず、最初から定期報告を業務に組み込みましょう。

さらに、「不明な点」と「不安な点」を別々に尋ねることをおすすめします。両者は一緒にされがちですが、あえて切り分けて質問することで、部下の本音を引き出しやすくなり、適切なサポートができます。

部下のためを思う「アドバイスぐせ」に注意

仕事を任せたあと、定期報告の場では、「対話」を意識してください。部下の主体性を高めるためです。このとき、コーチングのGROWモデルというコミュニケーションの型が便利です。

GROWの一つ一つのステップを覚える必要はありません。要は、“一緒に状況と原因を確認し、複数の方法の中から、自分の意思で選んでもらう”ことがコツです。

「こうしてみたらいいんじゃない」と提案したり、「昔はこうしていたよ」と自分の経験を話したりと、よかれと思ってアドバイスしている人は多いはずです。私はさまざまな企業でマネジャー向けの研修を提供していますが、こうした「アドバイスぐせ」のある上司は、いま主流になっている1on1ワンオンワン面談でことごとく失敗し、部下を伸ばすどころか、やる気を削いでいるのが現実です。上司にとってはアドバイスのつもりでも、部下は指示だととらえてしまうからです。

人間が主体性を持つのは、「自己決定感」を感じているときです。任せた部下に自分で考え、自分で決めてもらう必要があります。

逐一、細かいアドバイスを繰り返すと、それはマイクロマネジメントになります。マイクロマネジメントをされると、「言われた通りにやっておこう」という発想になり、部下の主体性は著しく損なわれます。さらに最も深刻な問題は、優秀なメンバーの離職です。自分で考える能力を持つ人ほど、主体性を発揮できない職場を嫌って辞めていくのです。

もちろん情報提供は必要です。「ほかの事業部ではこうしているらしい」「一般的にはこういう考え方もある」というように、考える材料になる情報はどんどん与えてください。ただし、情報提供はアドバイスと紙一重。部下が、「じゃあ私もそうします」と言ったら、「それはあくまでも向こうの事業部の話であって」「大事なのはわれわれがどうすべきかだから」といったん突き放したり、「どうしてそう思った?」「他部署のやり方のどこがいいと思った?」というように、思考を深める質問をしたりしましょう。「こうしたいと思う」という力強い意志が感じられる言葉が部下の口から出てくるまで対話を重ねることが重要です。

ベテランには「結果」を求めよう

部下によっては、GROWモデルによる「コーチ型」とは別のコミュニケーション方法をとったほうがいい場合もあります。

右も左もわからない新人には、一から十まで細かく教える「指示型」の指導が必要です。「なぜ(Why)、何を(What)、誰に対して(Who)、どこで(Where)、いつ(When)、どのように(How)するのか」という「5W1H」をできるだけ丁寧に具体的に伝えます。

不明な点・不安な点がないかを確認したら、最後に「復唱」してもらいましょう。「いろいろとお願いしちゃったけど、言い間違いとか伝え忘れがあるかもしれないから、念のために復唱してもらっていい?」という言い方をするのがコツです。

経験豊富な年上部下には、「委任型」コミュニケーションが適切です。最近では、自分自身よりもプレーヤーとして能力が高く、キャリアも長い部下をもつマネジャーも珍しくありません。熟練のベテラン部下には、方法は任せ、結果を求めてください。「あなたには、このレベルまでやってほしいと思っています。大丈夫ですか?」依頼時はこれだけで十分。必要があればサポートをすることを伝え、定期的に報告をしてもらいます。

ただし、「指示型」「委任型」を使うべき対象はほんの一握りと考えてください。ほとんどの部下に対しては、対話を通じて気づきを与えることがマネジャーの役割です。仕事を任せるときにも、任せたあとでも、部下に考えさせるコミュニケーションを意識しましょう。

鉄則3
すぐにアドバイスはしない。「自己決定感」を持たせよう
(構成=奥地維也)
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