英BBCはは軽減策が発表された2021年、中国の親たちから不満があふれたと報じる。軽減策は宿題負担を制限する代わりに、親は道徳教育の実施など、「充実した課外活動」に時間を割くよう指針を示していた。
中国の親たちからは、「私は996工作制(朝“9”時から夜“9”時まで、週“6”日。違法として問題視されているが多くの企業で採用されている)で働いているのに、夜帰ってきても家庭教育をしなければならないのか」「労働者を搾取しておきながら、子供を産めというのは無理な話だ」などの反論が聞かれたという。
英テレグラフ紙は二重軽減策の導入後以降も、子供たちが宿題に追われていると報じている。そればかりか、親の心労は悪化しているようだ。
英タイムズ紙は昨年、「子供の教育に関する親の負担を減らそうとする中国政府の施策は裏目に出ているとみえ、母親や父親は学校の勉強に関してこれまで以上にストレスを感じている」と指摘している。調査によると子供の教育に不安を感じる親は72%にのぼり、2018年調査の68%から4ポイント悪化した。
何のための宿題なのか
中国の親たちは、命や健康を犠牲にして教育に熱を入れている。子の将来を思うあまり、自分の身を差し出さざるを得ない厳しい現状がある。
宿題をする子供のライブ配信についても、追い詰められた親のなりふり構わない行動と捉えられよう。宿題を未提出に終わらせるわけにはいかず、膨大な課題に付きっきりで解法を指導しなければならない。家事や仕事との両立は至難の業だ。しかし、集中力を引き出せるとはいえ、子供が学習する姿をネット越しに親たちが監視し合う社会は、どこか歪んだ禍々しさを帯びる。
翻ってみれば私たちの日本についても、学校の成績や受験が将来の職業に大きく影響する状況は、決して人ごととも言っていられない。塾や習い事に熱心な親は、日本でもめずらしくない。定期試験の成績に一喜一憂し、固唾を呑んで子供の進学先を見守る状況は、どの家庭でも共通ではないだろうか。
何のために子供の自由時間を奪い、知識を詰め込んでいるのか。学歴社会と子供の教育のあり方について、中国の極端な事例に驚きを覚えつつ、日本の私たちについても思考の種としたい。