日米の金利差はさらに拡大するとみられる

米国の賃金は実質ベースで上昇している。企業はコストを販売価格に転嫁しやすい。4月に発表された3月の消費者物価指数や小売り売上高などのデータは、いずれも米国の個人消費が増加基調であることを示した。

金融政策はデータ次第としてきたFRB関係者も、「年初に想定した利下げは必要なさそうだ」と方針を修正し始めた。年内に利下げが実施される可能性はあるものの、実施の時期等はかなり緩やかだろう。

金融市場では、FRBの利下げ可能性が後退している。2023年末時点で、FRBは2024年に6~7回の利下げを実施すると主要投資家は予想した。4月下旬、利下げの確率は、12月に1回(0.25ポイント)まで低減した。

それに対し、日銀の金融政策は正常化に時間がかかる。4月26日の日銀金融政策決定会合後、日米の金利差はさらに拡大するとの観測は増え、29日に1ドル=160円台まで円安は加速した。その後、“覆面介入”とみられる動きで円売りは一時的に弱まった。

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世界的ヒット商品が生まれず、雇用慣行も変えられない

今後、円安を本格的に止めるには、わが国経済の実力の回復が必要不可欠だ。重要なのは、高付加価値の最終製品を増やし生産性を引き上げ、一人当たりのGDPを増やすことだ。生産性の上昇には、一人当たりの資本設備を引き上げることが必要になるはずだ。

労働市場の流動性を高めるなど取り組むべき改革は多い。課題を解決することで、潜在成長率は徐々に上昇させることだ。日米の金利差の拡大圧力も弱まり、過度な円安は修正に向かうはずだ。

ただ、日本経済の現実を見ると、課題の解決は容易ではない。足許、半導体関連の設備投資は増えているが、AIなどソフトウェアでわが国の企業は米国や中国の企業に遅れた。改革を阻む障壁の一つである、硬直的な雇用慣行を重視する経営者も多い。

日本経済を見限って、海外への投資を積極的する投資家は多い。2024年から始まった新NISAに関して、米国株などに資金を振り向ける個人は増えた。1月だけで1兆円近い円売りが発生したとの見方もある。国内経済の成長期待の高まりづらさは根深い。資本の流出も無視できない。