中小企業が賃上げを続けるのには限界がある

当面、日米の金利差は拡大に向かうだろう。4月下旬時点の世界経済は、米国頼みの状況にある。米国の労働市場はやや鈍化したとはいえ、依然としてタイトだ。個人消費が景気の拡大を支え、米国のインフレ率は2%を上回る状況が続く可能性も高い。

中東情勢のリスクにも注意が必要だ。イスラエルはイランなどに対する強硬姿勢を基本的に崩していない。イスラエルとハマスの戦闘が激化すれば、イランによるホルムズ海峡封鎖の恐れも増す。そうしたリスクが顕在化すると、原油や欧州諸国が依存を高めるカタール産の天然ガスの供給量は減少し、米国など世界的にインフレ懸念は再燃するかもしれない。

円安が進むと同時に原油などの価格が上昇すると、エネルギー資源や食料を中心に、わが国の輸入物価に追加的な上昇圧力がかかりやすくなる。国内の企業は粗利を確保するために価格転嫁を強化するだろう。

本年の春闘でのベースアップ率をもとに考えると、夏場のボーナスが一時的に上振れ、実質賃金がプラス圏に浮上する可能性はあるが、中小企業にとって大幅賃上げは難しい。実質ベースでの賃金上昇の持続性に不安は残る。再度、円安が勢いづくと、徐々に個人消費の下振れ懸念は高まり、景気持ち直しペースの停滞感が高まることが懸念される。

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