いまを充実させ、幸せになるためのお金の使い方

いまを充実させ、幸せになるためのお金の使い方として、ハーバード大学ビジネススクール教授のマイケル・ノートンとブリティッシュコロンビア大学教授エリザベス・ダンは「経験を買う」「ご褒美にする」「時間を買う」「いま払ってあとで消費する」「他人のために使う」の5つの原則を挙げています。

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モノを手に入れたよろこびは一過性でしかなく、時間がたつとそのありがたみが薄れますが、経験に対する支出は時間がたっても思い出として残り、満足感が増します。

もちろん「経験を買う」といってもすべてが幸せをもたらすわけではありません。飲酒、薬物、賭博、買春などの「経験」にお金を使うのは後悔と罪悪感をもたらし、健康を損ね、場合によっては人生を破壊してしまいます。

幸せと満足をもたらす経験として、ノートンは次のような条件を挙げています。

①誰かと共有し、社会的つながりを実感できる
②これから先も何度でも語りたくなるストーリーが生まれる
③ありたい自分や、なりたい自分をしっかりと実感できる
④比較できない特別な経験ができる

特別な経験として忘れられない5日間の旅

たとえば私は2012年の夏、女性の副首相との縁があって生まれてはじめてロシア連邦の一つの国・サハ共和国を訪れました。サハ共和国は日本の8倍以上の土地に98万人しか住んでいない、東シベリアの広大な土地に広がる極寒の地です。

レナ川をさかのぼり、シャーマンの祭りを見たり、氷の殿堂で夏でも零下20度の寒さを体験したり、いまでも鮮やかな記憶が残っています。

それによって仕事がうまくいったとか、論文が書けた、旅行記を書いたなどの具体的なメリットはありませんでしたが、その5日間の旅は、いまでも特別な経験として、忘れられない記憶となっています。

亡くなった母を京都旅行に連れ出したことも忘れられません。私の出張と日程を合わせた、暑い時期のあわただしい旅でしたが、母は修学院離宮の説明や、祇園の山鉾の細かいディテールを何度も思い出して語ってくれたので、そのたびに私は、いいことをしたなと心がほっこりしてうれしかったものです。これは①と②のミックスです。

そんなよい経験もあって、私は依頼された外国講演は時間さえあれば引き受けてきたのですが、ワルシャワ大学、ベネチア大学などでの講演は大学同士の交流協定にも結びつき、とても幸せな経験になりました。